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新しい女性の生き方のロールモデルは海賊にあり! [メディア・家族・教育等とジェンダー]

深夜アニメには決してドップリとハマっているわけではないのですが、いろいろ検索サイトで調べ物をしているうちに、こんなタイトルの作品にまたもや行き当たりました。

『 モーレツ宇宙海賊 』
漢字で「宇宙海賊」と書いてパイレーツと読ませる趣向で、「ツ」で韻も踏んでいるという(^^)
なお原作小説は笹本祐一著『ミニスカ宇宙海賊』だとのこと

………なんと宇宙海賊とな!
海賊ブームに、宇宙キターッ

しかも、公式サイトを見てみれば、フツーの女子高生がひょんな事情から宇宙海賊船のキャプテンになることを請われて――というお話だというではありませんか。

これはこれはなかなか画期的な内容の予感がしたので、早速に録画を(深夜アニメとしてもどエラい時間なので)セットして試視聴してみることにしました。

 §↓公式サイト↓§
http://www.starchild.co.jp/special/mo-retsu/top.html

 BL120211mo-pir.JPG


と――、
コレはすばらしい!

まぁ原作タイトルにもあるような「ミニスカ」系の描写は集客上の必要悪として(個人的には……悪くもないです^^;)、平凡だったはずの女子高生が、海賊になることを通じて、何を考え、どのように仲間と絆を結び、そしていかに成長していくのかが、しっかりと描かれるつくりになっています。

やはり、女性キャラがきちんと描写されている物語は名作――ですね。

もちろん海賊、それも宇宙海賊というのは、実際になろうというのは荒唐無稽なシロモノですが、作品の中で、海賊船のキャプテンになるという立場で自分を見つめ、自分の役割、今ここ で自分にできることを考え実行していく主人公の姿は、多くの人、とりわけ主人公と同様の女子高校生など若い女性にとって、生きていく上でのヒントとなりうるものです。

また実社会では、ジェンダー規範の中で女性が前景になる機会がどうしても少ない中で、例えば女性がリーダーシップを発揮することを期待されても、どうしても戸惑ってしまうケースも多いようです。
例えば災害の避難所の運営が男性中心の視点で運営される弊害は、昨年の東日本大震災でも指摘されましたが、その状況を改善しようと試みた避難所で、若い女性のリーダーを募ったところ、なかなか応じる人がいなくて困ったというような報告もあります。
 ※ツイッター @risetogetherjpさんのツイート1ツイート2ツイート3

しかしそんな中で、このアニメにおける、ほんの16歳やそこらの少女が海賊のキャプテンとして行動する様子、あるいはそこに至る、学校での(宇宙)ヨット部の練習航海で女子部員たちの一致協力に支えられて見せる、臨機応変に状況に対応して危機を切り抜けていく過程、……これらはまさに新しい時代にふさわしい女性のリーダーシップのロールモデルになるものではないでしょうか。


というわけで、今期はなかなか深夜アニメに当たりが多いです。
輪廻のラグランジェ』に加えて、この『モーレツ宇宙海賊』も要チェックのリストに加えておくことにしましょう。


ただ、そうは言っても、この『モーレツ宇宙海賊』のオンエアは関西地区の場合 土曜の深夜27時(日曜未明午前3時)台。
翌朝には『海賊戦隊ゴーカイジャー』も控えてるので、両方リアルタイム視聴するのは厳しいなぁ(^_^;)。
まぁそのへんは録画に頼るしかないとして、よくよく考えるとこの『モーレツ』→『ゴーカイジャー』の後、9時台には『ワンピース』もあるわけなので、なんとわずか6時間ほどの間に3本も海賊もののアニメ・特撮が放送されてるってことになります。
いやー、どんだけみんな海賊が好きなんだよ♪ (^o^;)


   

◎血筋・家柄で海賊が継承されてよいのか?という点
侍戦隊シンケンジャー』の終盤に際しても少し触れましたが、血筋や家柄を根拠に子どもに対して何かを継ぐように強いる体制というのは、本来的にはかなり外道であり、現実世界でなら、いわば憲法違反と言ってもよいことです。
ただ、このようなフィクションのポピュラーカルチャーにおいては、物語を面白くするための奇抜な設定として認められてしかるべきものでしょう。
そしてそのとき、子どもへの継承に関して性別は無関係という点を描くのは、やはり重要です。
『シンケンジャー』でも、シンケンレッドとして世界を守る使命が一子相伝な中で、その正式な継承者が女性であったことはまったく問題になっていませんでした。
同様に今般の『モーレツ宇宙海賊』でも、海賊船を継ぐ地位にある前キャプテンの子どもが女の子であるという点は、ことさらに審議事項としてフォーカスされてはいません。
その一方『機動戦士ガンダムAGE』は、この点で何を考えているのか、「親子三代にわたる戦い」で主人公が第二世代に移った際、大人になった第一世代主人公である第二世代主人公の父親は、妹だっているのに男である第二世代主人公のみにガンダムに乗って戦うことを継承させようとします。
これは自分たちの家柄の男が受け継ぐべき使命だみたいに語るその大時代なセリフは、宇宙時代になんと空虚に響くことでしょう。
いやはや、旧来の性別役割に囚われて女性キャラの主体性がちゃんと描けていない物語は駄作――と言うしかありませんね。


◎なぜ主人公が通う高校は女子校!?
『モーレツ宇宙海賊』で主人公が在籍する高校は「白鳳女学院」という名門女子校だという設定になっています。。
そういえば『輪廻のラグランジェ』でも同じく「鴨川女子高校」と女子校です。
なぜ女子校が舞台となるのでしょうか?
考えられる理由は………
1:ジェンダー規範に邪魔されずに個々の女性キャラを生き生きと動かせる
(男性キャラが主人公の直近の対等な立場に配置されるとどうしても現実世界のジェンダー秩序の影響を受けるし、下手な恋愛ボケ展開にも陥る危険がある)
2:カワイイ女性キャラをたくさん登場させられる
(いわゆる異性愛男性ファンの萌えニーズを満たせられ商業的な成功にもつなげられる)
3:百合描写もいっぱい!
(これに萌えるというニーズも既定の事実になりつつある)
  …といったメリットがあるからではないかと推察できます。
いやいやコレならマジじつにオイシイことです。
まさに皆得!!(^o^;)

参考・google検索[モーレツ宇宙海賊]で最初に出てきた一般ブログ記事
  →
 http://kousyoublog.jp/?eid=2597


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コメント 1

コメントの受付は締め切りました
毒蝮麭麺

ラグランジェの総監督さんと、モーパイの監督さんは同じ
人ですよ。女の子主人公ということで、『宇宙のステルヴィア』
『飛べ!イサミ』もおすすめしておきます。
by 毒蝮麭麺 (2012-03-31 09:53) 

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