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オタクとSNSとモビルスーツ [多様なセクシュアリティ]

機動戦士ガンダムAGE』がイマイチ評判が芳しくない件については先日触れましたが、そのわりには例えばツイッターでの【 #g_age 】【 #ガンダムAGE 】といったハッシュタグ前記事参照)は随分と盛況です。
特に番組の放映時間である日曜の夕方になると、このタグを付けたツイートが何百も飛び交っています。
それはまさしく「この盛り上がり方は異常w」(^o^;)という趣です。

内容的には、進行中のストーリーの実況やストレートな感想のほか、「その展開はオカシイ」「その設定は無理がある」的なツッコミ、あるいは過去のガンダムシリーズや他作品にちなんだ小ネタの披露など、多岐にわたっています。
中には理解するのに高度なオタク知識が必要なものも含まれていると言えるでしょう。

まぁ作品の仕上がりにツッコミどころが多いゆえに、ツイッターで感想を共有するのが楽しくなるというのもありますし、むしろツイッター等でみんなでツッコミを入れ合う楽しみのために番組を視聴するということさえあるようです。

背景には、やはり今までのガンダムのシリーズとしての蓄積ゆえに、視聴者層が並々ならず厚いということも考えられます。

※さらに、多くの深夜アニメのような「放映時間が地域によってバラバラ」「もしくは放映されていない地域もある」…ということが『ガンダムAGE』には少ないのも大きいかもしれません

ワタシもこのところは日曜夕方5時になるとノートPC広げて、この『AGE』オンエア中リアルタイムツッコミ大会に参加しているのですが、いゃなかなかオモシロイです。
日頃のツイッターで交流のある方々とはまた違った人たちともやり取りできますしね。


で、ふと思ったのですが、こういうことが、まさに番組の進行と並行してリアルタイムで可能になったというのは、インターネットの普及と、そのネット上に用意されたソーシャルネットワーキングサービス――SNSの成果にほかなりません。

ファーストガンダムや、ZおよびZZガンダムの時代にあっては、同様のことをおこなうのに2ヶ月後の月刊OUT誌上を待つことを強いられていたわけですから、いやはやイイ時代になったものです。
※『ZZ』どころか、おおむね環境が整ったのは『SEED』以降ですかね

一般にアニメ視聴というのはマイナーな趣味だとされていますし、実際に身近な生身のコミュニケーションが可能な範囲内に同好の士が存在するとは限りません。
(そもそも嗜好がタコツボ化しているという現代においては、それはアニメに限らないことではありますが)

しかし、そんな特定の興味関心を持つ者どうしが瞬時につながれるインターネットおよびSNSは、まさに21世紀的な人と人の連携の可能性を支えるツールなのだと、今さらながらあらためて感じます。

これは、とりわけ何らかの少数派、アニメに限らず、つまるところ例えばセクシュアルマイノリティの連帯などにとっても大きな力になる……なっている のは言うまでもないかもしれません。


そして逆に言えば、インターネット上のSNSがない時代には、雑誌などがその機能を果たしていたということでもあります。

約2ヶ月のタイムラグがあるとはいえ、月刊OUT誌上で例えば『Zガンダム』について語り合うアニメファンの熱意は、今日の『AGE』で盛り上がるツイッターユーザーに勝るとも劣らないものがありました。

特に当時は現在よりも、アニメファンのマイノリティ度は高かった印象です。
身近に同じ話題を共有できる仲間がいない者どうしが、そうしたメディア上でつながりたい欲求も、より切実で大きいものがあったのではないでしょうか。

そうして、そんな雑誌誌上で意気投合した人どうしが、今に言う「オフ会」などで顔を合わせた際、相手に呼びかけるときに「おたく……」という二人称を用いがちだったことこそが、いわゆる【オタク】という言葉の語源だとも言われています。
(ただしコレのソースは不詳。以前どこかで読んだことがあるのは確か)

思えばファーストガンダムの1979年といえば、その少し前の『宇宙戦艦ヤマト』ブームなどを受けて、月刊OUT(…いゃべつにアニメージュで代表させてもいいのですが(^^))などのアニメ雑誌が創刊され、そこへハガキを投稿することでファンが交流できる下地が整ったタイミングでした。

そうしてそこへ『機動戦士ガンダム』というエポックメイキングな作品が登場することによって、アニメファンによる一大ムーブメントがいっそう可視化され、オタク文化と名付けが広まっていったというわけです。

その意味では、何らかのソーシャルネットワーキングメディアで交流して盛り上がるのは、いわばガンダムファンの伝統芸能ということになるかもしれません。


世間ではまだまだ「オタク」を否定的な価値判断でまなざす向きも多いかもしれません。
しかし「オタク」とはある種のマイノリティがネットワーキングされたものであるというのがその核心であるのなら、「オタク」をマイナスイメージで捉えるのは差別だと言うこともできるでしょう。

オタク的な文化様式、視点、価値観………。
そういったものの中から、新しい明日のよりよい社会をつくっていくヒントが得られることは絶対にありえます。

その意味でも、しかるべき人々を集めたインターネット上でのオタク談義は、じつはとても有意義なものなのではないでしょうか。

 

◎この記事ではオタクとしておもに「アニメオタク」を扱っていますが…
   ↓ 補足 ↓
http://twitter.com/#!/tomorine3908tw/status/157389007913889792
 (ツイログを「オタク」で絞り込み)
http://twilog.org/tweets.cgi?id=tomorine3908tw&word=%E3%82%AA%E3%82%BF%E3%82%AF


◎オタクという言葉がマイナスイメージとセットになって一気に人口に膾炙したのは、1989年の幼女連続誘拐殺人事件において容疑者の自宅の部屋の様子がテレビの報道で映し出されたことが、やはりきっかけとして大きいでしょうか。
しかしあれらの映像は、もとより編集され写り込んでいる情報に偏りがあるのはもちろん、撮影クルーによる意図的な原状変更もおこなわれたらしく、相当な印象操作を伴っていると言えます。
(参考文献:長岡義幸『マンガはなぜ規制されるのか』平凡社 2010)
だとすると、ひとりひとりがメディアリテラシーをしっかり働かせて、「オタク=犯罪予備軍」のような誤った偏見に陥らない心がまえは非常に大切なのではないでしょうか。
    関連 

http://stream-tomorine3908.blog.so-net.ne.jp/2006-02-20


 


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