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おもちゃの男女別に押し寄せる変革の波!? [メディア・家族・教育等とジェンダー]

子ども向け玩具とジェンダーというのは、古くて新しいというか、なかなか根が深いというか、いわば男女二元的な性別秩序と構造的にガッツリ噛み合った、ジェンダー問題の象徴的な案件のひとつだと言えます。

一般に流布したイメージでも各種のオモチャに対する「女の子向け」「男の子向け」というイメージは強固でしょう。
そのことと一体の慣習として、メーカーの商品開発もまた男女別におこなわれ、流通段階にもそれが引き継がれ、宣伝広報、そして小売店の店頭まで、男児向けおもちゃ、女児向けおもちゃという区分は確固として維持されています。
そして、そのサイクルが循環することで、こうした体制が再生産されていくという自縄自縛も。

しこうして、個々の子どもたちは、各々の初期設定の性別属性を指標にして与えられる別々の玩具をつうじて、異なる社会化をされていくことになりますし、本来はひとりひとりが持っている個性に基づく興味選好に応じた遊びへのアクセスを妨げられることにもなります。
トランスジェンダーのライフストーリーをひもといても、幼少期に性別違和を自覚したきっかけのひとつに、これら玩具の選択をめぐる事案は、多くの人に共通しがちな鉄板のエピソードでありましょう。

ただ、近年では、性的少数者の問題にも関心が高まってきましたし、まずもって性別属性で人を一方的に二分することでひとりひとり多様な子どもたちの可能性を潰すことは良くないという認識も広まってきました。

最近は量販店の売り場を観察しても、事実上は「女児向けおもちゃ」「男児向けおもちゃ」という区分に応じて店舗内のエリアが分かれてはいても、建前としてはそうとはどこにも明示されていないというケースも見受けられます。

あるいは、例えばマクドナルドのハッピーセット。
オマケのオモチャの種類が、これまた実態としては「男の子向け」「女の子向け」のものが同時2種展開なことが定石ではあります。
が、このところはそのテレビCMにおいて、いずれのものについても(当該オモチャで遊ぶ様子を演じるために)登場する子役は男女織り交ぜたつくりになっていて、やはり建前としては「いずれも男女にかかわらず選べますよ」というメッセージは意識されるように変わってきました。

あとは子どもたちの身近にいる大人、親や教師・保育士らの意識がさらに柔軟になっていけば、旧来までの硬直したジェンダー意識も、いっそうの縮退が見込めるのではないでしょうか。

◎タカラトミーが公開している、自社製品「プラレール」の最新PR動画では、実際にプラレールで遊ぶ様子を映していますが、登場する子どもたちは男児に限定されておらず、プラレールは決して男の子限定ではないというメッセージを発しています。

 
◇◇

さて、そんなわけなので、プリキュアシリーズの各作品においてスポンサーが発売する、作中に登場するアイテムを模した玩具の数々も、やはり上記のような構造のもとにあるわけです。

となると、マーケティング上は「女児向け」の位置づけで、小売店では「女の子向けおもちゃ」のエリアに置かれる前提で企画・制作されることとも無縁ではいられません
(バンダイの社内組織も改革され今では事業部が男児向け女児向けと分かれてはいなくなったとはいえ)。

あまつさえ、売り上げを伸ばして事業を維持するためには、実際の最終的な購買決定権を持つ親や祖父母が、たとえ保守的な価値観を持っていたとしても、「おぉ! コレを買い与えればウチの娘/孫娘が将来は良いお嫁さんになるのにふさわしいおしとやかで可愛げのある女の子に育つのに役立つに違いない!!」と思わせて、販路を幅広くキープしなければなりません。

結果、プリキュアの変身アイテムのおもちゃを使ってどんな遊びをするかといえば、それは仮面ライダーや戦隊ヒーローのそれと大して変わらないにもかかわらず、その意匠はずいぶんと「女の子らしい(という社会で共有された通念に適合した)」ものになる……という事情はあるわけですね。

また、特に武器アイテムについては、メーカー側もより慎重になるのかもしれません。
玩具の元となる作中での設定自体、仮面ライダーや戦隊ヒーローのものであれば、そのモチーフとなる現実世界での存在がズバリ剣や銃であることは当然のこととして特に避けられてはいません。
ところがプリキュアシリーズでは、やはり何らかのバイアスが働いてしまうのでしょうか。実在の武器を基にしたようなアイテムはめったにないのですね。

シリーズ各作をふりかえっても、往年の魔法少女ものから受け継いだかの如き「バトン」「ステッキ」様のものは頻出しますし、あとは「タクト」、もしくは楽器系も好まれています
(たまに弓矢の場合があっても「愛のキューピッド」というイクスキューズが付されていたり、いちおうはズバリ剣モチーフでも「フルーレ」という相対的には厳つさが少ないものであったりも)。

まぁ作中では、こうした事情を逆手に取った作劇がおこなわれたことで、「必要なのは剣じゃない」という名セリフも爆誕し、「ケアの倫理で戦うヒーロー・プリキュア」ならではの珠玉の物語も紡がれてきたのではありますが;

§こちらも参考に
 正義の怒りをぶつけろガンダム!? からの「必要なのは剣じゃない」
  https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2019-04-27_Gundam40J

§そして『デリシャスパーティ プリキュア』
 デリシャスパーティプリキュアのパンチの効いた新機軸
  https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2022-03-02_DpPr-Mary


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 ※画像は公式サイト・放送画面ほか公式の媒体よりキャプチャして引用しているものです。以下の画像も同様

で、そんなこんなで、本年度の『デリシャスパーティ プリキュア』において、最初に(ありていに言って5月の連休商戦で玩具を売り出すためのタイミングで)スポンサーから支給(!?)されたパワーアップ新アイテム「ハートジューシーミキサー」についても、モチーフはその名のとおりジューサーミキサーで、デザインもすこぶるファンシーさを前面に出したものとなっています。
そう、これならたとえ祖父母のジェンダー観が相応に因習的であったとしても、帰省してきた孫に買ってあげるに躊躇はされず、やすやすと財布の紐を締めてもらえる!

ただ………

作中での使用方法は、ガチで銃!!

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完全に銃!

誰だよ「ハート銃シーミキサー」なんて言ってるのはw

ということで、今しばらくは番組としての商業的な要請と、作品として何をどう描いていくべきか……のせめぎあいは続いていくであろう時代環境の中で、このあたりも、『デリシャスパーティ プリキュア』が一歩踏み込んで攻めた姿勢で作品の描写をおこなった要素のひとつと言えるかもしれませんね。

※言うまでもないですが、フィクションにおける銃モチーフのアイテムやソレの玩具で遊ぶことと現実の銃をめぐる問題は文字どおり次元が違う案件であり、分けて考える必要があるでしょう。
特にプリキュアシリーズの作中ではでは、こうしたアイテムを用いながら発動する最終的な決め技は、物理的な殺傷力を持つものではなく、敵モンスターを生成している闇のエネルギーを除去する(ある種の「魔法」的な)効果を有した《浄化技》であるという設定が通例となっています。


◎「ケアの倫理」に限らず、フィクションにおける戦いの場にリアルな戦いにはありえないような「カワイイ」表象が持ち込まれることの意義もまた、一度しっかり検証され正当に評価されるべきでしょう。
プリキュアの姿形のデザインがフリルやリボン満載で「バトル」にはおよそ不向きだ……というツッコミはたまにあるネタですが(そんなミニスカートじゃ、むしろ変身前よりも防御力が下がってるだろう……みたいなのも、すでにセーラームーンの時代からありました)、これも真面目に捉え直すなら、女性が戦いの場に参画する際の男装する必要をなくして見せた・女の子が女の子としてそのまま戦えるようになった、と、フェミニズムが評価すべき事象のひとつだとも言えてきます。

◎男女別マーケティングが根強いという商業的な事情に左右されない稀なケースを見れば、例えば先に人気が爆発的に広がり後から関連商品が企画された『鬼滅の刃』などなら、男女別が厳格ではない商品展開になっていたりもします。


あと、もうひとつ、この2022年の注目すべき事象として、『リズスタ』があります。

『リズスタ』は、5年にわたって「実写版プリキュア」として人気を博した『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』から『ビッ友×戦士 キラメキパワーズ!』に至る「ガールズ戦士シリーズ」が一旦終了した後を受けて登場したもので、簡単に言えば「ダンスに特化したアイカツ」のような内容です。

なので、マーケティング的には「女の子向け」の番組であり、タカラトミーから発売される関連玩具も、小売店では女児向け商品のエリアに配置されてはいます。
だいたいプリキュアのコーナの隣で覇権を競っているというのが実相ですね。

 → 『リズスタ』公式サイト
  https://rizsta.jp/

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したがいまして、この「リズスタブレス」や「リズスタライト」、見てのとおり、なかなかの魔女っ子アイテムに他なりません。

他ならない、の、ですが、なのですが、しかし!!

なんと、これらのアイテム、なんと作中では、これらがまるっきり完全に男女兼用のものだという世界観で運用されているのですね。

え? べつに女子限定なんてこと、ナイですよ!

と、ばかりに、作中では男性登場人物らによって、こともなげに使用されている様子が再三登場します。

これもまた、効果的な攻め方の意義ある設定ではないでしょうか。
願わくはこの「こういうのが好きなら性別にカンケイなく選んでイイんだよ」というメッセージが幅広く届いてほしいところです。

『リズスタ』作中では、そうした世界設定を受けてというのもあるのでしょう、主人公らメインメンバーによるユニットの男女比が(あえて男女二元的に言えば、ですが)、当初が「女2:男1」、追加メンバー加入後は「女3:男2」と、いわゆる戦隊ヒーローの男女比のスタンダードの逆パターンになっています。

こういうところにも作品の斬新なコンセプトが現れていると言えますし、そがゆえにストーリーも殊更に「女の子向けっぽい」ところへ陥ることもありません。
引き続き見守っていきたいところです。

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てなわけで、この2022年、旧来から続いてきているおもちゃの男女別、およびそれと密接に結びついているテレビの子ども番組の内容に、押し寄せている変革の波が、なかなかオモシロイ形で見えてきています。
この波に、乗らないという手はありませんノ


  

  

◇◇

(2023/07/09)
さて、2023年度のプリキュアシリーズは『ひろがるスカイ!プリキュア』となっており、これについてはコチラ「可能性ひろがるスカイ!プリキュア男子レギュラー登場」にてすでに少し述べています。
その変身アイテム「スカイミラージュ」の玩具は、LEDバーサライトの回転機構を活かしたものとなっており、作中での変身シーンのエフェクトも玩具と対応した演出になっています。
で、この「LEDバーサライトの回転機構を活かした玩具のエフェクト・作中変身シーンの演出」、なんと今年度のウルトラマンシリーズ『ウルトラマンブレーザー』と丸カブりなんですよ!
変身アイテム本体にパーツをセットすることで「変身」が発動する仕掛けが共通しているなんていう点は今に始まったことではないですが、今般は特に、回転する光の醸し出す絵面が、マジ「……いっしょやん!」なんですね。
まぁ身も蓋もないことを言うなら、これは玩具の製造発売元であるバンダイが部品となるバーサライトLEDモジュールを両製品間で共用してコストダウンを目論んでいるということになるのでしょう。
いゃ、ソレはよいのです。むしろ営利企業が合理化でコストダウンを図るのは当然です。しかしその際にパーツの共通化が図られるのがプリキュアとウルトラマンの玩具の間なのだとしたら、それはひとつ、メーカー側の意識の中では[これは男児向け・こちらは女児向け]といった観念が相当に希薄になってきていることの現れだと言うこともできてきましょう。
バンダイでは数年前に社内組織の改変が実施され、事業部の男児向けトイ・女児向けトイといった分かれ方は過去のものとなっています。それもまたパーツの共通化をプリキュアとウルトラマンの間でおこなうハードルを下げているだろうことは想像に難くありません。しかして今般のような事例は、今後も増えこそすれ減りはしないと思われます。
メーカー側がこうしたスタンスで来る以上、顧客の側もまた、玩具をめぐる「男女別」の因習から意識的に距離を取っていく必要が、ますます高まってきているのではないでしょうか。

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