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「LGBT」など性的少数者の人権、セクシュアリティの多様性、クィア論、男女共同参画などや、そうした観点に引きつけてのコミュニケーション論、メディア論、「アニメとジェンダー」など、ご要望に合わせて対応いたします。※これまでの実績などはお知らせブログにて

2013年セクマイ描写のターニングポイント [メディア・家族・教育等とジェンダー]

2013年、といえば早もう10年前。
むむむ;
光陰矢の如し。

必然的に10年の間には、この世の中のさまざまなことが変わりました。
デジタルテクノロジーはもとより、国際社会、ウイルス感染症をめぐる情勢まで…。
もちろん、性の多様性をめぐる認識もまた、この10年で大きく進んだのはまちがいないでしょう。

そして、あらためてこの2023年の時点から、この10年余りを振り返るなら、2013年というのは、日本のアニメ(などに代表される各種ポピュラーカルチャー)におけるセクシュアルマイノリティ描写/クィアセクシュアリティ表現についての、大きな節目・重要な転換点だったとも言えそうなのです。


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 ※本項目中の画像は引用要件に留意のうえ各公式画面からキャプチャしたもの

思えば「翠星のガルガンティア5話問題」があったのも、この2013年でした。

*詳しくはこちら
 → 「こんなの絶対おかしいよ!」翠星のガルガンティア5話問題
  https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2013-08-13_gargantia-5

性的少数者を類型的に描写し面白おかしく嗤いものにするようなことが、仮にも丁寧につくられた秀作アニメの中でおこなわれるのは、これを最後にしてほしいと、当時は願ったものですが、幸いにしてワタシの観測範囲では、実際にあれが最後になっています。



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あるいは、椎名高志による『絶対可憐チルドレン』。
これを原作コミックとして2008年にアニメ化がおこなわれた際には、主人公らに敵対する立ち位置の組織に属する登場人物の1人《マッスル大鎌》が、ある種の「オカマキャラ」として非常にカリカチュアライズされた人物像で描かれていたものです。

しかもマッスル大鎌、原作での初登場はコミックス8巻なのに、アニメでは第1話のメイン敵キャラとして抜擢されるという厚遇(?)ぶり。
おそらくは、このマッスル大鎌の「オカマ属性」がアニメ化に際しての一種のキャッチーなキャラづけとして視聴者への「つかみ」にバッチリだと判断されたのでしょう。
まさに、いまだ2008年には制作側がそういう認識でいた、そんな時代の限界が露呈した事象の典型例かもしれません。

そもそも『絶対可憐チルドレン』は、超能力者である主人公らを通して、さまざまなマイノリティの自己肯定&社会的受容についての課題の数々を描き出した意義ある作品です。
したがって、『絶対可憐チルドレン』で描かれる主人公ら超能力者の各種の苦悩・葛藤は、現実のさまざまなマイノリティの困難が仮託されたドラマトゥルギーだと解釈できますから、その意味でも本作で性的少数者を揶揄するような展開があるのは不適切です。
今日の視点で評価するなら、再考の余地がある第1話のつくりだったと言わざるを得ないでしょう。

ところが2013年に、敵組織のボスである、いわばダークヒーローとしての人気キャラ・兵部京介に焦点を当てた、いわゆるスピンオフとしてアニメ化された『THE UNLIMITED 兵部京介』では、このマッスル大鎌も、特別に奇をてらったようなところが皆無の、話し方などにちょっと中性的なニュアンスも含まれてるかなぁ程度のキャラ造形にとどめられた登場となっているのです。

これはむろん原作内での時系列に応じたキャラの役割の推移なども反映しているので、一概には言えませんが、やはりひとつには、2013年時点での基準の進展に合わせるなら、2008年版と同様の取り扱いはできないという判断があった、おそらくはそのような事情が介在していると推察できます
(原作でのマッスル大鎌のキャラ造形は、元々は連載当時のある種の時事ネタ・流行りモノのパロディとして登場した経緯があるという事情も)
このあたりに、制作側の認識が5年を経る間に大きく遷移したことが明確に伺えます。
それが2013年だった、というわけです。



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そして、もうひとつ。
この『THE UNLIMITED 兵部京介』とちょうど同時期に放映されていたアニメ『たまこまーけっと』にも特筆すべき案件が登場します。

『たまこまーけっと』は、京都の商店街を舞台に、主人公である餅屋の娘と周囲の人々の交流を主軸にした心温まる物語を描き出した作品です。
商店街の人情味あふれる日常を絶妙の塩梅で活写する、京都アニメーションが制作した秀作だと言うこともできましょう。

で、その京都の商店街で生花店を営んでいるのが、こちら「花瀬かおる」。
見てのとおり「花屋の店主の女性」として、特段の変哲はないキャラです。
ただ、この花瀬かおるの声を担当するのが、じつは小野大輔氏。
数々のイケメンキャラをも演じているイケボ声優ですね。
………しこうして花瀬かおる、ビジュアル上はまったく不自然なポイントは存在しない一方で、喋ると若干の違和感が醸し出されるという状況が現出するわけです。

つまるとろ、この花瀬かおる、トランスジェンダー女性だということなのでしょう。
しかし作中では、とりたててその点に言及されることはない。
作中の周囲の人々も、さしてソノことを意識している様子はなく、ごくごく自然に接していている。
あまつさえ公式サイトのキャラ紹介でも殊更に説明があるわけでもない。

結果、セクシュアルマイノリティはどこにでも当然に存在し、つねにすでに善き隣人としてフツーに暮らしている、という事実に基づいた状況が、きわめてナチュラルに提示されるわけです
(同様のメソッドは2016年『魔法つかいプリキュア!』での魔法界の商店街で仕立て屋をしているフランソワさんの設定にも引き継がれました)。

「LGBT」への関心が高まりはじめた当初なら「性同一性障害者の苦悩に迫った問題作!!」のようなアプローチにも意義はあったでしょうが、2020年代の今などは、むしろ性の多様性はあたりまえのこととして、決して特別扱いすることなく物語に織り込まれるケースが主流になってきてるとも言えます。

*そのあたり2020年にこちらで述べてます
 → LGBTが「もうあたりまえ」の時代
  https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2022-01-29_AlreadyLGBT

そうした表現の嚆矢が、この2013年の時点でアッサリとおこなわれていたことは、まさに画期的です。

かかる先進的な描写と、翠星のガルガンティア5話問題のような旧時代の残滓がせめぎ合っていた、そんな2013年は、やはりアニメにおけるクィアセクシュアリティ表現のターニングポイントであったと言って間違いはないでしょう。



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他にも、日常系百合アニメの金字塔である『きんいろモザイク』が2013年のスタートだったりしますし、翌2014年にはそれと双璧を成す『ご注文はうさぎですか?』もアニメ化されます。
そうして、2014年には『プリパラ』にレオナが登場。
2015年になると「好きの多様性」展開の総本山となる『響け!ユーフォニアム』のアニメ化もスタートします。

かくして現在では、いくつものアニメ作品で多種多様なクィアセクシュアリティが描き込まれるという豊穣が達成されているわけです。

その起点のメルクマールたる2013年から、わたしたちは今10年後の未来にいるし、それはさらなる次のステージへの未来の途中なのでも、きっと、あるのではないでしょうか。

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