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「LGBT」など性的少数者の人権、セクシュアリティの多様性、クィア論、男女共同参画などや、そうした観点に引きつけてのコミュニケーション論、メディア論、「アニメとジェンダー」など、ご要望に合わせて対応いたします。※これまでの実績などはお知らせブログにて

佐倉満咲、卒業論文を執筆する [今週の佐倉満咲]

我が娘・佐倉満咲センセイが、今年度はもう大学4年生となっており、2021年6月には教育実習にも行っていた話は、すでに記事にしたとおりです。

いゃ~、ついこのあいだ大学生になったばかりだというのに、さような次第なので、もはや卒業も近いという時期なんですねー。

はやいものです、じつに
(てゆか高校卒業、あるいは小中学校卒業だってしかり;)。

  → 佐倉満咲、教育実習でLGBTの授業をする
  https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2021-06-28_teach-R

  → 佐倉満咲、大学でジェンダーを学ぶ
  https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2018-12-09_MUs-GS

  → 佐倉満咲、高校を卒業&大学に入学する
  https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2018-05-21_MUs2018h

◇◇
で、そんな2022年1月も終わろうかという今日ですから、かの大学4年生にとっての一大イベント・卒業論文についても、先般なんとか無事に執筆を仕上げて、すでに提出を終えた形となっております。

なんでも過日にあっては大学で卒論公聴会みたいなもの(!?)も開催され、他の学友や先生方の前でプレゼンをおこない、相応の評価も得られたみたいなことも言っていました。

なので、形の上での単位認定にもモンダイはなく、卒業も確定ということらしいです。

てなわけで、まずはめでたい。
というか、このところ「卒論の影の指導教員」をさせられてきた身としても、ようやく肩の荷が下りた形ですね。


 BL220130_MUs-BclTss.png (画像はイメージです。出典:いらすとや

思えば満咲が社会学系の学部の学生となって以来、本を借りに来られたり、食後のひとときの会話で妙にディープな専門用語が飛び交うことになったり;

まぁ満咲サンとしても、あぁぁ何かもうちょっとこういう方向性の参考文献があったらなぁ……と急に思い立ったときに、ダメ元で相談すればワタシの本棚から相応に求めてたものに近い書籍が、あたかもドラえもんが四次元ポケットからひみつ道具を出してくれるかのごとく、ひょいと提示されるのは、論文を執筆するうえで、地味にアドバンテージだったようです。
実際、ソコから有用なヒラメキを得ることもあったみたいですし。

あるいは昨年の秋口以降の卒論追い込みの時期には、ワタシの仕事部屋のサブデスクを占領し、ノートパソコンを設置、参考文献類等々を積み上げて執筆に励んではりましたね。
曰く、ココだと何かあったときにすぐにワタシに尋ねられたりするし、軽くネタ話を交換しながらだと執筆も進むから……とのこと。
う゛むむ……;
コレでは卒論の影の指導教員をさせられている、というよりは、むしろ院生室の論文執筆仲間じゃないですか、まるでw
(ワタシも私で、そんな満咲とマジメな会話やネタ話を交えながら「週刊金曜日」の原稿を書いたり、その他の講演大学授業のパワーポイントや動画をつくっていたわけですネ)

4年間ふり返っても、満咲との会話が、あたかも大学院生どうしが研究室で話しているかのごときノリになることがしばしばあったのは、お互いに有意義かつ良き思い出と言えそうです。

満咲もやはり特にジェンダー方面などはなかなか鋭いセンスで学究を深めており、ワタシが何か問いかけたら存外に的を射た社会学ワードを返してきたりするようにどんどんなっていったのは大したものだったと言えます。
いろいろなテーマについてワタシにタレコミ情報をもたらしてくれる際なども、例えばちょっとした炎上案件の報告のときなら、きちんと自力で男性ホモソーシャルのこととか男女二元的異性愛主義の観点とかまで言及してたので、いゃはやこのところの我が娘・満咲のレベルの上がり方、親バカを差し引いても並々ならないとまで思ったりしたものです。

そうそう、3年生になって新型コロナウイルス感染症の影響で大学の授業が急遽すべてオンラインになってしまった際には、「◯◯社会学の授業? オモシロそうやん!」とワタシが横で一緒に受講(!?)することがあったのも、満咲としては、登校せずに自学自習を強いられる慣れないスタイルの中でのモチベーション維持の助けになった、ようなことは言っております。
担当の先生が先の展開のための伏線を張った話をするやいなや、ワタシが勢い余って、その先の展開のネタバレをコメントしてしまい、後でビミョ~な空気になったのは、今となっては笑い話ということでよいでしょうか。………むしろ先生、ゴメンナサイw

その他、ブログでは未公開のネタのいくつかも、ツイッターに残っていたりします。

 

 


で、
そんな満咲サンの卒業論文、テーマはさて何だったのかと言うと(むろん社会学系の学部のゼミで研究したテーマだというのは既述のとおりとして)何やら「アイドル」関連だったようなのですね
(個人情報等々に配慮するとコレ以上は詳述できないのが恐縮ですが)。

………アイドルで卒論。
ソレって、親が…ワタシが学部学生時代にやりたかった、けれども諸般の事情で叶わず、そしてその諸般の事情には性別違和がそこはかとなく絡んでいたという、ルサンチマンの塊みたいなやつじゃなっスか!?

ん~むむ;
親が果たせなかったアイドルを何らかのテーマに据えて書く卒論、我が娘・満咲が今般達成したというのも何かの因果なのでせうか。

ちなみに、ワタシが卒論で実現できなかったアイドルについての論考をめぐりめぐって2016年に書くことになったりもした、かの雑誌「ユリイカ」、その号や他の号を織り交ぜて、しっかり参考文献に用いてはりました満咲サンであります。

まぁこんな具合なので、そのあたりも含めて、このたびの我が娘・満咲の卒論に至る大学生活のあれやこれや、なかなかいみじい話だったということになりましょうか。

◇◇

++++++(2022/02/16)+++++++

ワタクシ・佐倉智美がアイドルで卒業論文を書き直したいという話題、ひょんなことからお知らせブログのほうで、高槻市での観光大使へのアニメアイドルの起用の件と絡めて紹介する機会ができました。
せっかくなので合わせてご笑覧くださいノ

  高槻とアイドルマスター/今日も明日も花ざかり(佐倉智美「お知らせブログ」)
  https://est-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2022-02-16_YayoiTakatsuki


なお、どのようにおニャン子クラブで卒論をまとめるのか……については、以前にツイッターで軽く整理していたコチラのような感じになりますでしょうか。

 


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共通テーマ:学問

LGBTが「もうあたりまえ」の時代 [多様なセクシュアリティ]

さて、2020年から世を席巻している新型コロナウイルス感染症については、今後も各種の変異株の登場の可能性などに鑑みると、まだまだ油断はできないと言ってよいとは思われますが、幸いにして昨秋、2021年の10~11月前後は、比較的落ち着いた状況ではありました。

そのため、大事を取ってオンライン開催のみとなったものを含めると、講演講師のお仕事も複数こなすことができた結果にはなっていました。
『性別解体新書』刊行記念的な位置づけでのイベントもありましたしね。

 

◇◇
で、あらためて振り返ると、昨秋の講演タイトルには《性の多様性がもうあたりまえの時代》とか《LGBTがあたりまえの社会》といった文言のものが、わりと目立つ印象です。

お知らせブログの[出演・講演講師など]カテゴリを概観すると、2019年頃からそういう方向をめざしたい・めざそうという意味合いのものが登場していますが、2021年の分はソコから1歩踏み込んで「もう」あたりまえに「なっちゃっているヨ!!」という、英文法で言えば現在完了形のニュアンスにしてあるのが、地味にこの分野をめぐる社会状況の進展と連関しているかもしれません。

  → 滋賀県立高校の教職員研修をしました
  https://est-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2021-12-03_eOtsuHSt

  → 芥川高校で特別学習を担当しました
  https://est-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2021-11-20_AktGwHS2021

  ……などノ

◇◇
まぁ講演タイトルというのは多少の「時代の0.3歩先」を提示して、「もはや世の中これからはこうですよ!」「さぁみなさんどーする!?」と煽るようなつけ方も望まれるものですから、その意味でも「もうLGBTはあたりまえの社会」だよと謳うこともあって不思議ではありません。

たとえ実際には、まだまだ遅れた認識・体制の界隈なり分野が残っているとしても、そこにこそ進展を促す意味でも、こうしたプロモーションは意味があると言えます。
いわゆる「予示的政治」のひとつですね。

でも、さりとて、そうは言っても、コレ、時代を1歩も2歩も先取りしすぎてしまうと、タイトルとして、見る人のボリュームゾーンには上手く刺さらないというのも難しいところ。

したがって一般論としても、広告宣伝の業界などではいかに「0.3歩先」にコントロールするか、そこらへんの塩梅には相当に注意を払っているのではないでしょうか。

と、いうことは、逆に言うと、「LGBTはもうあたりまえの社会だよ」が、2021年時点では、おおむね「時代の0.3歩先」あたりまではやって来た、そこまで世の中は進んだ、だからこそ講演タイトルとして穏当なものになってきた、ということでもありましょう。

それこそ、界隈とか分野などによっては、本当に「もうあたりまえ」になってきているケースも、この2020年代には珍しくないとも捉えられます。

そのあたりの実際の様相は、個別に丁寧に見ていかないといけませんし、社会全体の水準と、個々人の生きている現場のリアリティの間にもギャップはあることでしょうから、もちろん早合点は禁物です。

それでも、かつて自分が性別移行を始めた頃の手探り感、今よりも乏しいネットの情報を苦心して集めた日々、さらにおそらくはそれ以前にはもっと孤独に血の滲むような苦労をされてきた先人のみなさんの取り組み…、そうした歴史に思いを致すなら、かように社会情勢が遷移してきた、その事実ははかりしれず感慨深いものとなります。


 BL220129_AlreadyLGBT_KieHK.JPG ※テレビ朝日公式サイトからキャプチャした画像
◇◇
そして、そうした「LGBTはもうあたりまえ」を、象徴的に反映するものとして、ひとつテレビドラマでの描かれ方も見逃せません。

アニメに限らず、実写作品でも各種のクィアセクシュアリティを当然のフツーなこととして描いたタイトル群が台頭してきている件については、2018年時点でも概観してみました。

  → 2018年は「2014年のアニメが変態すぎる…」どころぢゃナイ!
  https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2018-12-10_QueerAnimndSo

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2021年にあっては、そのあたりが、いっそうさらにナチュラルになった印象があります。

例えば『消えた初恋』。

ひねくれ渡による漫画作品が2021年秋にテレビドラマ化されたのですが、同性愛的な親密感情の取り扱い方が、非常に上手い具合で、配役されたジャニーズのイケメンタレントたちも、そのあたりものすごく適切に演じている。

ジャニーズタレントのプライベートでもファンであり、また研究対象にもしている我が娘・佐倉満咲も、これを絶賛していました。

  → テレビ朝日公式『消えた初恋』サイト
  https://www.tv-asahi.co.jp/kietahatsukoi/

◇◇
すなわち、同性愛は当然にあるものであって、なんらオカシなことではない、という前提のうえで、物語が架構されており、いちおうの作劇上の「お約束」として主人公らが「もしみんなに(男どうしで付き合ってることが)バレたら……」のように悩む展開が最低限は入ってはきていましたが、結局のところ本当に「みんなにバレ」た暁には、誰もがヨカッタじゃんと祝福してくれるという、なんという優しい世界ノ

つまるところ「禁断の同性愛をめぐる苦悩を赤裸々に描いた問題作!!」みたいなレギュレーションでないと同性愛が真面目に描けなかった時代では、もはやなくなったということです。


 BL220129_AlreadyLGBT_KomCom.JPG ※NHK公式サイトからキャプチャした画像

あるいは『古見さんは、コミュ症です。

原作はオダトモヒトによるマンガ作品で、アニメ化もされていますが、2021年秋にはNHKで実写ドラマ化されており、これが全体としてもなかなか秀逸な仕上がりでした。

  → NHK『古見さんは、コミュ症です。』サイト
  https://www.nhk.jp/p/ts/EYMZ6JJWVM/

◇◇
そんな中で、主人公の幼なじみという設定の登場人物(その名も「長名なじみ」;)が、いわゆるトランスジェンダーの高校生であり、主人公が記憶しているのは男の子だった時代なものの、高校で再会すると女子としてふるまっていて制服も女子用でスカートを履いている……というような設定で描かれていました。

しかも、そのことはまったく特別視されず、何のモンダイにもなっていない。
誰からも、その点を、指摘されず、ソコがフォーカスされるストーリーの回もない。

徹頭徹尾、「そりゃ学校には性別違和傾向がある生徒、何人かは在籍してるヨ! その中には性別移行を実践してる生徒だって、当然におるやろ!?」という感じのスタンスで扱われているわけです

(あまつさえ「長名なじみ」は、作品タイトルが「コミュ症」なとおり対人コミュニケーションにモンダイを抱えるキャラクターがこれでもかと次々登場するのが面白さのストーリーの中で、逆に誰ともすぐに打ち解けられるコミュニケーション能力の抜群に高い存在と位置づけられてさえいます)。

演じる俳優は「ゆうたろう」だったのですが、その演技も秀逸で、じつに自然にバランス良く、そうした為人を体現していたと言えます。

たしかに他の「女子生徒」と比べると、いささかの違和感も醸し出されていましたが、それはドラマ描写上の適正に演出された結果でしょう。
まったく違和感ナシに描いてしまうと、そもそも視聴者に性的少数者の登場人物なんだと伝わらないですから、因習的な「オカマ描写」は慎重に避けつつも、何らかのクィアネスを可視的にキャラに盛り込むことはいたしかたありません。

…ぃや、ソコをモンダイ視するなら、まずもって特に何も示されていなければその登場人物がシスジェンダーかつヘテロセクシュアルだろうと読み取ってしまう解釈コード・それでヨシとされる社会習慣こそが問い直されないといけないのですが、そうなるとソレは「時代の2,3歩先」の話になっちゃいますしね。

ともあれこの事例も、トランスジェンダーが登場するテレビドラマ作品として、「性同一性障害者の苦悩に真摯に迫った意欲作!!」とは対極の位置にあり、それが可能になった2020年代の社会自体が、「LGBTはもうあたりまえ」になってきている、そのひとつの指標なのだと言えます。

まとめるなら、「性同一性障害者の苦悩に真摯に迫った意欲作!!」とか「禁断の同性愛をめぐる苦悩を赤裸々に描いた問題作!!」にでもしないと、「ホモ・レズ・オカマを普通でない変態として嗤いものにして消費する」構造とは距離を置いて、真面目に取り組むことができない、そういう状況が30年、20年前には、あるいはもしかすると10年前にさえ卓越的だったのが、近年はようやく、しかしめざましく変わってきた……ということではないでしょうか。

  

◇◇
というわけで、性的エモーションの感じ方は様々だし親密欲求も多種多様なので(「好きの多様性」)、「恋愛(や性行為)は男女で」に限るのは窮屈すぎる。

そもそも社会関係の場にどのような自己呈示をおこなうかも個々人の個性の豊穣を尊重すべきなわけなので、性器のタイプを指標にして人を男女2つのジェンダー属性に分断するのも横暴にすぎる。

……そういう認識が、今後ますます「もうあたりまえ」のこととして人口に膾炙していけばいいなと思います。

◇◇

◇◇



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