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プリキュアが宇宙へ進出する意味を探ると顕になる多様性の真髄 [メディア・家族・教育等とジェンダー]

さて、前記事のとおり2018年度のプリキュアシリーズ『HUGっと!プリキュア』は最終回を迎えたわけですが、いよいよシリーズ16年めを飾る新しいプリキュア作品が明日、2019年2月3日に開始されます。

その名もスター☆トゥインクル プリキュア』!

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§画像は放送画面もしくは公式のサイト等よりキャプチャしたもの。以下この記事中同じ


 →朝日放送「スター☆トゥインクルプリキュア」公式サイト

 →東映アニメーション「スター☆トゥインクルプリキュア」公式サイト


なんとプリキュアの活躍が宇宙で繰り広げられるとのこと。

そう、宇宙です、宇宙!

宇宙キターーッ!


…というか、主人公・如月弦太朗が変身するたびに決め台詞のようにそう叫んでいた平成仮面ライダーシリーズの人気作『仮面ライダー フォーゼ』でも、天ノ川学園に通う高校生たちが仮面ライダー部の活動を通じて宇宙に肉薄していましたが、はたして今般はプリキュアでもそんな感じの舞台設定になるのでしょうか!?

宇宙(そら)に描こう! ワタシだけのイマジネーション!」というキャッチコピーからは、「女の子向けアニメ」という割り切りのもとでのふんわりファンタジーな感じに寄せたテイストになる可能性も否定できない反面、むしろわりとガチめにSFな宇宙描写がおこなわれそうなニュアンスも滲み出ている気がします。

一昔前にファンが宇宙プリキュアの設定を妄想するような場合には「星座」に直接フォーカスした、例えば黄道12宮の属性を各々が身につけた総勢12人の戦士があいまみえるようなもの、つまり『聖闘士星矢』のプリキュア版のようなアイデアが中心だったかもしれませんが、少なくとも今回はそういう路線とは異なっているような事前情報となっています。

公式サイトなどで発表されている作品概要では、舞台設定が「地球から遠く離れた星空界の中心部の聖域で宇宙の均衡を保ち続けていた12星座のスタープリンセスたちが……宇宙へと散らばってしまい、このままだと……」「そこに宇宙への支配を企むノットレイダーが……」などと、何やらむしろ戦隊シリーズのものでも不自然ではないくらいの雰囲気です
(「スタープリンセス」云々まわりの設定にはたしかに「星座」要素が付加されてはいますが)。

となるとアレでしょうか。
一昨年2017度にやっていた戦隊『宇宙戦隊キュウレンジャー』のプリキュア版とでも呼べるものなのでしょうか。
敵の設定「宇宙の支配を企むノットレイダー」ってのは、なるほどキュウレンジャーでの敵勢力・宇宙幕府ジャークマター(ないしは『海賊戦隊ゴーカイジャー』の宇宙帝国ザンギャックとか)とほぼほぼ同じノリですw

「宇宙はワタシたちが取り戻す!」

……いゃそんなキュウレンジャーの決めゼリフそのまんまをプリキュアも言うわけではないでしょうけれど、ともあれこのような新基軸はプリキュアシリーズに新たな地平を拓くものであり、またジェンダー撹乱的であることにも存分であり、非常に期待が高まります。

まぁ上述のとおり同じ日曜朝のヒーローものである仮面ライダーや戦隊シリーズでも宇宙モチーフのものが近年あった流れのもとでは、今年はプリキュアも宇宙だというのは、番組のメインターゲットの子どもたちにとっては何の違和感も不自然もないことだというのが、この2019年の真実なのかもしれません。

今後もライダー・戦隊・プリキュア間でモチーフがクロスオーバーする事例は、増えこそすれ減りはしないのではないでしょうか。


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ちなみに公のアナウンスでは、宇宙は未知なるものを湛えた主人公らにとっての好奇心の対象であり、同時に文化や価値観が異なる存在がせめぎ合うフィールドでもあり、そこで多様性がこともなげに受容されている様子をあたりまえのこととして描き出すことが図られているそうです。


参考

 → 最新作は宇宙を舞台にプリキュアたちが大冒険!
https://thetv.jp/news/detail/174285/1026975/

 → スター☆トゥインクルプリキュア:自然に多様性描く
https://mantan-web.jp/article/20190201dog00m200037000c.html


例えば2016年度の『魔法つかいプリキュア!』でも、異なる世界どうしの出会いから相互理解、そして共生というテーマは丁寧に織り込まれていました。
未だに現実の国際社会の中では対立や紛争なども絶えない状況下で、未来を生きる子どもたちにその解決の一助として理想の世界を示すことは、番組が持つ使命という点では非常に誠実です。

また前記事のとおり『HUGっと!プリキュア』では、ジェンダーにかかわる多様性の考え方にも非常に積極的に斬り込んでくれていたわけです。
これもまた、今の時代に求められていることなのは言うまでもありません。

今般の『スター☆トゥインクル プリキュア』では、そのコンセプトを引き継ぎつつ、より発展させた形で、いわば宇宙規模で描き出してくれるのではないでしょうか。


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そして、そう考えたときに注目される登場人物が、キュアミルキーに変身する羽衣ララだということになります。

ララは惑星サマーン出身の異星人だという設定。

もちろんシリーズ過去作では、異世界出身者や(前記事のとおり『HUGっと!プリキュア』では)未来の科学で作られたアンドロイドがプリキュアの変身者となる前例はありますが、つまるところこれは「初の異星人プリキュア」だということになり、その点がすでに注目され話題にもなっています。

しかしです。

もう一歩踏み込んで考えてみると「惑星サマーン出身の異星人」だということはですね、もしかすると地球人から見ると「初の男の娘プリキュア」に該当したりする可能性もないではないのではありませんか!?

はたして「惑星サマーン」には、現代地球の私たちと同じようなジェンダー観念・性別概念があるのでしょうか?

いわゆる生物学的にも(例えば『ドラゴンボール』のナメック星人と同じように)単性生殖な可能性だってあるわけです。あるいは雌雄同体とか。

したがって惑星サマーンの人々の間には地球人が考えるような「男女」が区分された実態はない! としても不思議ではないのです。

もしそうであれば、羽衣ララが「女の子」なのは、私たちが現代地球の私たちの社会に存する解釈コードでそう解釈・判断しているに過ぎないことが、あらためて顕になることになります
そうしたその場での解釈・判断こそが、社会における「性別」の意味のすべてであり、それ以外に「本当の性別」は存在しない……とは、くり返し述べているとおりです)。

ぃや~本当にそうならモノスゴク攻めた設定なのですが、真相はいかに……??

ともあれ、こうした点にも着目すると、新番組がよりいっそう楽しみになるというものです。

いずれにしても、今年もまた私たちがプリキュアから大きな感銘を享受できることは疑いありません。

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(2019/02/03)-----
第1話を視聴すると、プリキュアシリーズ最新作として適切な進化形になっている、視聴者の期待水準を充分に上回るスタートでした。
これからどんな物語が展開するのかは、ひとえに楽しみです。
引き続きじっくり見守っていきたいところです。

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そして、やはり「宇宙」描写に関してはわりとガチSFなほうへ寄せてありました。
やっぱ「プリキュア版キュウレンジャー」!?
かつプリキュアシリーズの世界観の範疇をいちじるしく逸脱しないギリギリのライン。
日本のアニメ史を検索するなら『うる星やつら』あたりと近似したリアリティレベルの「宇宙」だと言えるかもしれません(カラーリングなどのデザインが1980年代を意識しているという情報もありましたが、そのへんの話ともつながる部分があるのかも
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(2020/02/01)
羽衣ララの性別をめぐっての件ですが、最終回までの展開をふまえて、以下の記事にて言及しました。
あわせてご一読ください。

 → ウルトラマンがプリキュアとカブる令和
https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2020-02-01_CosmicSign

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