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シンケンレッドはカミングアウトすべき事情を抱えたヒーローだった!! [多様なセクシュアリティ]

さて、1月に入ってから急展開の『侍戦隊シンケンジャー』。
17日の放映もすんで、個人的には「最終回へのルートが見えた」印象はあり、視聴者が納得できる大団円も想像がつくようになったと思うのですが、それでもまだまだこの先の展開からは目が離せません。

そして、引き続きネット上でも話題沸騰し、議論百出しているようです。
大きく分けると、やはり戦隊シリーズ初の女性レッドであるところの新たに登場した真のシンケンレッド――以下[ 姫レッド ]――を好意的に評価する人と、従来の(設定上は「影武者」としてこれまで戦ってきた)レッド――以下[ 殿レッド ]――に感情移入の重心がもっぱら置かれている人との間で、状況の受け入れに、若干の温度差があるということでしょうか。

ただ、よくよく現在作品中で起きている問題の本質を整理すると、じつは単に次のようなものなのではないでしょうか。

つまり、ある人物(ここでは殿レッド)に関する特定の情報が秘匿されたまま、その人物と周囲との人間関係が紡がれ、社会的な親密性の醸成が一定レベル以上に達していた時点で、秘匿されていた情報が、その人物の自発的カミングアウトによらずに、意図しないタイミングで一気にアウティングされてしまったために、その人物や周囲が混乱している――。

こう書くと、いったいどんなセクシュアルマイノリティ話やねん(^o^;) って感じですが、要するにこういうことですよね。

だから、一時的な混乱が収まって、全員が心の整理をつけられれば、状況自体は、根本的に問題なことには何もなっていないのです。

殿レッドも現在は放心状態ですが、本人の内実は何も変わっていないわけですから、おりを見て戦列復帰すればよろしい。それでべつに誰も何も困るわけではないし、むしろ戦力アップなので歓迎すべきことです。
じつは影武者だったという事実にしても、だからといって、これまでの仲間とのチームとしての成果や、その中で培われてきた絆までが、すべて嘘というわけでもありますまい。

姫レッドもまた、非常に真摯な人間像が提示されており、前回《願わくば、この「新・真レッド」がはじめからレッドな、もうひとつの「アナザー・シンケンジャー」の物語も、ぜひ見てみたかったものです》と私に書かしめるほど魅力的なキャラクターであり、冷静に見れば好感度大な人物です。
「影武者に隠れて生きるのは卑怯」→だから「死に物狂いで封印の文字を修得し、自ら戦う道を選んだ」という態度は、侍としてまったく間違っておらず、いわば子ども向けヒーロー番組の正義側の人格として一点の曇りもない。
さらには、彼女もまた、何もなければフツーの女の子でありえたところを、「シンケンレッド」の家柄に生まれたゆえの人の世を守って戦うという過酷な宿命を覚悟を持って受け入れ背負ったという背景があるはずですね。

すでに、[ 姫レッド ]と[ 殿レッド ]の2人分の「火」のモジカラを合わせて「炎」! …というアイデアは、多くのファンのブログで予想的に語られていますが、そういう漢字のお勉強的なネタが子ども番組というプラットフォームと親和的である以上に、この方向性は物語の落としどころの予想として、まさに必然なのではないでしょうか。

そして逆に言えば、そうであるからこそ、“一時的な混乱”のほうは激しいのかもしれません。
とにもかくにも、それまでの関係性の大前提がひっくり返ってしまったわけですし、個々の局面で[ 姫レッド ]と[ 殿レッド ]のどちらに優先順位を見出すかについても、大いにジレンマが発生します。
今はだから作中登場人物も視聴者も、ソレで悩んでる最中なわけです。

そうしてそんな現状を的確に表現したのが、17日放映の46話(第四十六幕)におけるグリーンの台詞、「もっと憎たらしいお姫様なら簡単だったのにな」。

そうそう、ソレソレ(^^)


で、これを、もう少し別の観点から言い換えるならば、「松坂クンが二役で演じるタケルそっくりな未来人なら簡単だったのにな」(^^ゞ

実際『未来戦隊タイムレンジャー』のときのリュウヤ隊長なら、何かたくらんでそうでじつに胡散臭かった(事実、私的な事情で歴史を改竄しようとしていた)ので、劇中の他のメンバーも素直に従えなくてよかったし、視聴者は単純に「タツヤがんばれ~!」と従来レッドのほうを応援することができたわけです。

メインライターとして【脚本・小林靖子】だった、戦隊シリーズとしては前作にあたる『タイムレンジャー』は、そんなわけで今般の『シンケンジャー』と比較・対照すると、これまた思った以上にいろいろな発見ができそう(『シンケンジャー』の今後の予想にも役立つかも!?)ですが、そのへんの掘り下げは、また日を改めて書きたいと思います。

◎第1話から伏線てんこもりの小林靖子ワールドを刮目して見よ(^o^)丿
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