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シンケンジャーから見る「こうあらねばならない自分」と「そうなりたい自分」 [メディア・家族・教育等とジェンダー]

というわけで小林靖子がメインライターとして脚本を執筆する戦隊シリーズとして最新作である『侍戦隊シンケンジャー』と前作にあたる『未来戦隊タイムレンジャー』ですが、両者を並べてみると、いろいろと対照的に見える部分が、じつは大局では共通項になっていたりするので、なかなか興味深かったりします。

殊に主人公と言えるレッドの置かれる立場ですね。


★『シンケンジャー』のレッド――殿レッド[ タケル ]は…
 ↓
志葉家十八代当主(の、それも影武者)としての宿命を受容してシンケンレッドとなる。
 ↓
物語終盤、真の志葉家十八代当主の登場により、その責務とシンケンレッドの任を解かれる。

★『タイムレンジャー』のレッド[ タツヤ ]は…
 ↓
浅見コンツェルン会長のあととり息子で、いわば次期「浅見家(三代目?)当主」と予定されたレールに乗った人生を拒み、自分探しを試みていた途上で、ひょんなことからタイムレッドとなる。
 ↓
物語終盤、父親の容態悪化にともない“次期当主”としての責務を期待されて浅見コンツェルンの会長代行に就任を請われ、相前後して未来から突如現われた本来の隊長からタイムレッドの任を解かれる。


一見すると話の展開の個別のベクトルは正反対を向いているのですが、大きく見ると両者には共通したテーマが描かれています。

すなわち「自らの持って生まれた宿命と、いかに向き合うか」――。

[ タケル ]のようにその宿命を背負うにせよ、[ タツヤ ]のように拒否しようとするにせよ、そうした宿命ゆえに周囲から期待されるこうあらねばならない自分」と、自分自身が思い描くそうなりたい自分」に、どのように折り合いをつけていくかというのは、社会的存在である人間にとって、人生における重大な課題だと言えます。


小林脚本では、このモチーフは重視されているようで、メインではないものの小林靖子がいくつかの脚本を担当した『轟轟戦隊ボウケンジャー』でも、ボウケンピンクの[ さくら ]――西堀財閥のお嬢様だったが、小さいころからの令嬢教育に反発して家を出、自衛隊のレンジャー部隊などを経てボウケンジャーにスカウトされた……というタイムレッドとよく似ているとも言える設定――に焦点が当たる回で、秀逸な構成がなされていたりしました。


そして、「こうあらねばならない自分」が周囲から強く期待されてしまうほどの宿命というのは、じつは何も侍の家系とか特定の上流階級の家柄に限ったことではありません

私たちの社会が、人が生まれ落ちた瞬間に「性別」という属性を付与する習慣下にあり、そこで「女」か「男」かの、いずれに割り振られるかによって、その後の人生で期待される社会的役割大きく異なってしまうことを思えば、すべての人はジェンダーという名の「こうあらねばならない自分」の宿命を背負っているに他なりません。

だからこそ、そんな宿命の中で、本当に自らが希望する「そうなりたい自分」を、どのように実現していくのかというテーマは、誰もが当事者となりえるドラマなのではないでしょうか。


そうしたこともふまえて、ラスト3回となった『侍戦隊シンケンジャー』のオンエアを見守り、そして『未来戦隊タイムレンジャー』の感涙の展開をもまたDVDでチェックしてみるというのは、なかなかオツなことかもしれません。

  

◎ただ、『タイムレンジャー』をいろいろひもといてみると、別の意味で“もうひとりのレッド”だったタイムファイヤーの存在が、今般の『シンケンジャー』のコノ後の予測に対して、どういうヒントになりうるかというのが、若干気になるところですねぇ。
やはり【脚本・小林靖子】だった『仮面ライダー龍騎』の衝撃の最終回(の1回前)ってーのもあるし…。
つまり、そっちへ行っちゃうか、それとも前述の「炎!のほうになるのか、そこらへんが油断できない残り3回のポイントかも!?(^^)


◎それから、上述のように見ると、姫レッド登場後の[ タケル ]はまさに本当の「なりたい自分」を探す端緒に付いたばかりなわけで、その観点なら『しゅごキャラ』とシンクロして見えるのもまた必定なのかも(^^ゞ。


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