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スイートプリキュア、何が幸福で何が不幸なのか!? [メディア・家族・教育等とジェンダー]

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「恋愛とか、結婚とか、子どもが産めなきゃ普通じゃないの!?
 …ママの『幸せ』を押し付けないで!」

テレビドラマIS~男でも女でもない性~第7話、美和子のセリフ(要約)より
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スイートプリキュア』にはもはや見るべきものはないと視聴打ち切りを決めたことは、以前述べたとおりです。
が、その判断に間違いがなかったかどうか気になって、結局のところその後もおおむね毎回チェックし続けている今日この頃です(^o^;)。
まぁ『海賊戦隊ゴーカイジャー』が面白くてリアルタイム視聴のモチベーションが高いために、その流れで→仮面ライダー→プリキュアと、なんとなくながら視聴になっちゃうのも必然なのですが。

ただ、9月のこの時点まで来ても、「その判断に間違いがなかった」ことは、証明され続けています。

最近は我が娘・満咲までもが、「スイートプリキュアはつまらない」と公言しだす始末。

むろん現在では12歳の彼女の視点はすでに大きいお友達に近く、番組本来のメインターゲット層のモニターにはならないかもしれませんが、逆に保育園のころには七夕の短冊に素直に「プリキュアになりたい」などと書いていたこともある、そういうまさにプリキュアとともに大きくなってきた世代だけに、プリキュアのご意見番としての信頼度は高く、だとすると『スイートプリキュア』のこの現状は、かなり由々しき事態なのかもしれません。


いったい『スイートプリキュア』のどこがダメダメなのでしょう!?
もちろん
 ◇キャラが立ってない(人物像に深みがなく感情移入できない)
 ◇世界設定の底が浅い(物語世界が平板で魅力に乏しい)
 ◇ストーリー展開が不自然(登場人物の言動に違和感)
…などといった点を挙げることは簡単にできます。
(第1話のつかみの弱さは、ゴーカイジャーの同じく第1話が、説明セリフがほとんどないのに登場人物の相関関係が容易に飲み込めたり、主人公らの建前上は不合理な選択が視聴者には納得が行くように丁寧に作られていたのと、まさしく対照的かも)

ただ、これらはしょせんまさに個人的な感想にすぎません。
こういう理由でつまらなければ「つまらないからもう見ない」で済む話です。
だからもちろんスイートがお気に入りな人を非難するわけではないし、現に楽しんで見ている子どもたちがまちがいだというような意図もありません


また他にも、物語の展開の中で、主人公どうしでのギスギスした仲違いがやたら描かれることが番組の序盤では繰り返されました。
しかもその仲違いの原因は、お互いちょっと譲り合いきちんと対話すれば済むようなもの。つまり両方が悪いので、視聴者としては最後にさしあたりの仲直りがあっても、納得も感動もしづらいのです。
(逆にもっと激しい衝突であっても、両方が悪くない、双方がソノ点について譲れないことが正当だと視聴者的に理解可能ならOK――『花咲くいろは』22話のように民子が緒花とのケンカで「死ね」とまで言っても文脈上気にならない――なのに)
あるいは、敵との絡みのなかで、嘘をついて騙したりその挙句の裏切りといったパターンでの人間関係の破壊も、常套手段として用いられがちでした。
これらもまた昼ドラならギリギリなんとか許容可能かなと思えるほどのドロドロで、日曜朝の子ども番組としてはいささかダークサイドに落ち過ぎの感がありました。

このようなことが毎回毎回くり返されると、視聴者としてイヤな気分になって、番組自体に辟易するのも無理からぬことです。
日曜日の朝から、見れば気分が欝になるとわかっては、チャンネルを合わせる気にもならなくなるのは、人間の心理として必定です。

この点については、検索するとこちらのサイトなどに詳しかったので、よろしければあわせてご覧になってみてください。
 [http://mitoku.ti-da.net/e3472733.html
 [http://mitoku.ti-da.net/e3476368.html
 [http://mitoku.ti-da.net/e3313354.html
(直リンク先記事の他、サイト内検索できるようになってます)

『スイートプリキュア』はいちおう音楽がモチーフとなっていて、「しあわせのメロディ」で人々の幸福を守る「メイジャーランド」が正義側陣営で、対して悪の側の「マイナーランド」は聞けば悲しくなる「不幸のメロディ」によって人々を不幸にすることを企むという設定なのですが、これではまるで『スイートプリキュア』というアニメそのものが、見る者の気持ちを不シアワセにするテレビ番組だと言わざるをえません。
いわば番組自体が「不幸のメロディ」になってしまっているのです。

いゃ、ただこの点も10歩譲れば、イヤなら見るな、ハイわかりました――の範疇だと考えられなくもありません。


しかし、問題はそれにとどまらないのです。

例えば、「メイジャーランド」「マイナーランド」という名称設定は、むろん音楽のコードに由来するのでしょうが、メジャーコードの明るい曲→正義/マイナーコードの悲しい曲→悪 …というのも短絡的すぎるという指摘は、すでにほうぼうでなされています。
(終盤に向けて真の敵が現れて両者は和解する展開だという情報もあるにはありますが)
加えて、あくまでも音楽のコード由来であったとしても、暗に マジョリティ=多数派が正義/マイノリティ=悪しき異端 というミスリードを招く危険はあります。
こうした、看過しがたい微妙な問題点は、『スイートプリキュア』には少なからず散見されます。

そして、そうした問題点の最大のものは、やはり前述の「しあわせのメロディ」「不幸のメロディ」にありました。

すなわち、「しあわせのメロディ」によって人々は幸福になる/「不幸のメロディ」を聴くと人々は不幸になる――はわかるとしても、じゃあ何が幸福で、何が不幸なのか!? という点に関しては、じつは番組内では一切具体的に示されていないのです。

これは思いのほか重大な欠陥です。

何が幸福で何が不幸かを明示していないということは、番組が対象として想定する子どもたちに対しての、こんなふうに生きていこうというメッセージがなおざりになっているということではありませんか。
これは、番組の根幹が空洞、作品のテーマが存在しないと言ってもよいでしょう。

結果として視聴者は、幸せや不幸の定義は、漠然としたイメージに頼りながら世間一般の価値規準を援用するしかなく、つまるところ多数派によって構築されている社会通念に適ったものこそが幸せのメインストリームとしてのヘゲモニーを握ってしまうことになります。
ぶっちゃけ「女の子のシアワセは、素敵な男性と結婚して、子どもを産んで育てて……」なんて単純で安易なところに回収されてしまう危険が大アリなわけですね。

思えば、シリーズ前作『ハートキャッチプリキュアでは、自分自身の心のありようを大切にしていくことが重要なテーマとして据えられ、そんなありのままの自分が誰かから否定されてしまうことの不幸というものが、明確に描写されていました。
それゆえに、自分で自分の全部を好きになって、ひとりひとりの心のなかにある無限の可能性を育んでいこうねというメッセージも、子どもたちにわかりやすいものとなっていました。

前々作『フレッシュプリキュア』も同様で、すべてを支配するスーパーコンピューターによって司られた超管理社会を敵陣営として描くことで、主人公たちの人間社会における自由――、そこから生まれる友情、絆、夢、そして良い意味での欲望などが、人が幸せをゲットする源泉だと訴えていました。
だからこそ、中盤で敵の女幹部だった人物が味方陣営のほうに来て新たなプリキュアとなる展開も、序盤での戦いを通じて主人公たちの様子を垣間見たことで、自分たちの陣営の在り方との間で葛藤が起きた末に「すべてを管理される不幸」を悟ったゆえであるとも納得できるし、描く意義もあったわけです。

もちろん、作品のテーマに従ったメッセージだって、それが視聴者への押し付けだという批判はあり得るでしょう。
さりとて、許容しがたい「メッセージ」であれば、それこそ反発するという手もあります。
具体的にテーマなりメッセージなりが存在すればこそ、反面教師として活かすことも可能になるのです。

しかし番組のコンセプトが空洞、テーマが存在せず、メッセージは漠然――。
これでは反発するにも暖簾に腕押しです。

そうして、知らず知らずのうちに幸せや不幸の定義が多数派基準の通念に依拠してしまうことで、社会不正義の温存になんとなく加担してしまう結果をもたらすとしたら、まさしく番組の存在が害悪に他ならないとさえ言えてしまうことになります。

もはや「伝統ある」という枕詞が相応しくなっているプリキュアブランドの最新作が、どうしたことか、このようなテイタラクなのは、遺憾としか言いようがありません。


こんなことなら、いっそのこと本当にあの『けいおん!』のメンバーにそのまま変身しといてもらえば、音楽モチーフのプリキュアとしてちょうどヨカッタなどという冗談も、なにやらリアリティを持ってしまいます。

いゃ、あるいは『花咲くいろは』と放送枠を入れ替えたいとは、先日述べましたが、もう音楽モチーフはどうでもいいので、この際“チーム喜翆荘”に変身してもらうのでもよいかもしれません。名付けて湯乃鷺プリキュア!?
そうですね、例えば…
 松前緒花 → キュアパトリシア(必殺技:スーパーぼんぼりシュート)
 鶴来民子 → キュアワープ(必殺技:アルケミックホビロンクラッシュ)
 押水菜子 → キュアヘイジー(必殺技:ハイパー内弁慶シールド)
この場合、和倉結名はセーラームーンでの「なるちゃん」ポジションで、途中加入の新プリキュアには………孝一クン!?(^o^;)
で、巴さんが先代のプリキュアって設定とか。
あ、大女将も先々代のプリキュアで、ハートキャッチのキュアフラワーみたいなポジションで、みんなを仕切っているってのもイイですねぇ………

………………

お!?


おぉっ!

今、気が付いた。


こ、コレがホントの


スイプリキュア」!!

(^o^;)


 


 
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