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「LGBT」など性的少数者の人権、セクシュアリティの多様性、クィア論、男女共同参画などや、そうした観点に引きつけてのコミュニケーション論、メディア論、「アニメとジェンダー」など、ご要望に合わせて対応いたします。※これまでの実績などはお知らせブログにて

響けユーフォニアムがエースをねらえよりむしろプリキュアに似てる件!? [メディア・家族・教育等とジェンダー]

「ど~もー、前記事に引き続き、またまた佐倉智美 著・小説『1999年の子どもたち登場人物の佐倉満咲です(^o^;)」

「同じく黒沢歩です……」

「やっぱり同じく、栗林理素奈で~す;」

「ぃや~、期末テストも終わって一息だねぇ」

「ボク、ちょっと赤点が心配…」

「歩クンは大丈夫でしょ。……それより前記事でとりあげた『響け!ユーフォニアムも、アニメのほうは最終回がすでに済んだわね」

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(放送画面より。以下、響けユーフォニアムとプリキュア画像は本記事中は同じ)

「もぉ めっちゃ感動だったよね。……ボクもやっぱなんか部活しておけばよかった気がしてきたよ(^^ゞ」

「ボクたちはストーリーの行きがかりで下校部(帰宅部)になっちゃったからねー」

「作中の時系列だと、今頃って、ちょうどアニメ第10話のあたりなのかな」

「第13話の吹奏楽の京都府大会の本番が、ボクたちが福井県坂井市三国へ臨海学習会に行ってる頃あたりだそうだよ」

「じゃぁ、私たちが京都駅前に買い物に行く日は、向こうのアニメ第12話くらいに相当するのね。帰りに電車が宇治川渡るときに黄前久美子チャンが橋の上で叫んでないか、よく見とこぅっと(^^)」

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「それはそうと、どうしてボクたちまた前記事に続いて再登場なの?」

「そうそう。お父さんからちょっとアドバイスをもらってさ。『響け!ユーフォニアム』原作者がセーラームーンネイティブ世代という点に着目するなら、もっと現時点でのプリキュアシリーズとの相同性をていねいに整理しとけとか、『エースをねらえ』を引き合いに出すなら昭和のスポ根モノとの差異をもう少し具体的に比較しろとかね」

「さすが作者、なかなか的確ねぇ(^o^;)」

「……つまるところ『響け!ユーフォニアム』を概観して強く感じられるのが、物語の基本線キャラ配置のメソッドに、プリキュアシリーズと共通するところが大きいってことで」

「そうなんだ……」

「まずもってそれを象徴するのが、アニメ『響け!ユーフォニアム』OP主題歌『DREAM SOLISTER』が、なんか女の子が変身して戦うようなアニメの主題歌っぽく聞こえることだったり……」

 

「そういえばエンディング主題歌の『トゥッティ!』のCDでcwになってる『ベルアップ!』も、なんだかプリキュアシリーズのエンディング主題歌によくありがちな内容だよ」
※「トゥッティ/Tutti」はイタリア語で、音楽においては全員そろっていっしょに演奏することの意

 

「で、滝先生の位置づけが、ドキドキプリキュアのジョー岡田氏ていどの重要……というのも、あながち単なる中の人ネタではなくて、なかなか思った以上に正鵠を射た比喩かもしれないし…」

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「この黄前久美子×塚本秀一関係性は、ハピネスチャージプリキュアでの 愛乃めぐみ×相楽誠司相似形なんだよね」

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「言われてみると、キャラ配置なんかも……。加藤葉月チャンは、5人編成プリキュアでの赤の人に相当してるし…」

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川島緑輝と書いてサファイアちゃんは、いかにも黄色プリキュア(^^)」

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「あと、そのデンで行くと高坂麗奈チャンは、いわゆる紫プリキュア的な立ち位置なんだけど、初期の久美子との緊張した関係は、ハピネスチャージプリキュアでの ひめ×いおな と照応しているようにも解釈できるよね」

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「なるほどな。部活モノのジャンルで、新着任の指導者を迎えて全国大会をめざすストーリーなのに、昭和のスポ根アニメとよりも、むしろプリキュア等を連想させられるようなつくりになってるというのは、やはり若い世代の創作者の新しい感覚によるところで、今風のゆえんなんだね」

「でね、『響け!ユーフォニアム』原作小説2巻を読むと、ますますだよ。夢が叶わなかった絶望やふとした誤解からの友情のすれ違いによって心を閉ざしてしまった少女が《ラスボス》で、その救済と、和解、友情の恢復がクライマックスになってるの」

「それ、たしかに昨今の《女児アニメ》の鉄板の題材だもんねー。アニメ化すればまさに変身バトル抜きバージョンのプリキュアだよ(^^;)」

「だから、1992年生まれの女性が《女性主人公たちが部活で全国大会をめざして奮闘する「スポ根」青春小説》を書いたら、往年の『エースをねらえ』のようなテンプレをいちおうは下敷きにしているようでいて、それにもかかわらず、むしろプリキュアとそっくりと言ってもよい物語ができたというのは、やはり大きな意味がある……。そのあたりをお父さんもおっしゃってるのね」

「じゃぁ、一方での、その『エースをねらえ』とは、どんなふうな点が相違するんだろ?」

  

(原作コミックや全シリーズのアニメを仔細にチェックすると別途ありえるとしても)いちおうコンパクトにまとまっている1979年の劇場版アニメに準拠すると、まず前記事から書いてるとおり、滝先生と宗方コーチの位置づけがゼンゼンちがってる。加えて、滝先生本人は難病で死んじゃったりしない」

「ソコも巧妙にズラしてあるけど、『響け!ユーフォニアム』では才能を買われて上級生を差し置いて抜擢されたことで反感を抱かれてしまうのが麗奈チャンで、メイン主人公ではないというのも、巧妙なズラしだわ。てゆーか、吹奏楽の力量的には麗奈チャンこそが『エースをねらえ』のお蝶夫人に相当するところとかも」

「だからこそ久美子×麗奈の深い関係性がこってりと描写可能になってるわけかぁ」

「……『エースをねらえ』では《百合》描写はないの?」

「うん。……今の視点だと、何か物足りないのはソコね。岡ひろみ×愛川マキの関係が薄味でストイックに見えちゃう;」

「今ならもっとシンフォギアの立花響と小日向未来のようなディープな方向もありうるはずだもんなぁ。……世界へ羽ばたこうとするひろみを応援し、自分はひろみが帰ってくる場所を守っていると言うマキに[愛川マキは、私にとっての陽だまりなの。マキのそばがいちばんあったかいところで、私が絶対に帰ってくるところ(はぁと)]みたいに返すとか見てみたいゾ(*^_^*)」

「そのへんが時代的な限界? 当時はその発想はなかったのかしらね」

「で、やっぱ『エースをねらえ』では《男》の存在感がやたら大きいよ。男子テニス部の藤堂先輩なんて主人公・岡ひろみとアッサリとフラグを立てては、やすやすとソレを回収していくんだから、久美子チャンの幼馴染・塚本秀一クンが見たら羨むことこの上なしw (そしてソコは秀一クン「俺ももし昭和に生まれていたら…」ではなく「俺も女だったら麗奈と対等に張り合える…」のほうへ行ってほしい(*^_^*))」

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(劇場版エースをねらえ画面より。以下、本記事中は同じ)

「そういえば岡ひろみと宗方コーチとの関係性も、いわば強い絆として作劇の中心になってるわ。この点は『響け!ユーフォニアム』では、麗奈チャンは滝先生にLOVEとはいうものの、アニメではそのことをセリフで説明した以上の演出はほとんどないし、あまつさえ恋愛ボケ描写などは避けられてる。むしろ強調されていたのは、音楽に対しての純粋で真っ直ぐな思いと、あとは久美子チャンとの深い心のつながり(*^_^*)」

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「『エースをねらえ』だと、岡ひろみが抜擢されたときに、ただそれだけで羨望や嫉妬の念を周囲から向けられてしまい、それがいわゆる《女は陰湿》という印象をミスリードしてしまう問題があったのを、『響け!ユーフォニアム』は慎重に回避してるのも大きいよ。紛糾したきっかけは選考に不正があったのではないかという疑惑だし、それを執拗に追及する先輩側にも、周到にドラマが用意してある。全員の行動の動機が、音楽への思い、部活へのひたむきさ、他者への思いやりになっていて、本当に《誰も悪くない》んだから」
※『エースをねらえ』でもテレビシリーズでそのあたりを補完するエピソードは描かれているそうです→ http://www.style.fm/as/05_column/animesama01.shtml 他にもひろみとマキをはじめ女性キャラどうしのつながりについても

「ともあれ、こんなふうに比較対象のサンプルとして適切なものを定めて共通項でくくり、その上で相違点を洗い出すと、最新作の何が新しくて21世紀的で、この先はどう変わっていくべきなのかも考えやすいし、逆に旧作のどこが古く因習的で何が昭和っぽいのかがハッキリ認識できるからわかりやすいわね」

「そして大きなちがいの何が核心かというと、複数の女性キャラに多層的な関係性をつくって物語を動かして描いていくメソッドが、《セーラームーン以降》に象徴される蓄積によって、この2015年においては確立しているってことじゃないかい?(人数的にもアニメ化においては女声声優の層の厚さが相当なものになってるだろうし)」

「そういう意味では『響け!ユーフォニアム』は、まさに《プリキュア10周年時代のスポ根青春ドラマ》なのね」

「そのうえで、そうした点を差し引いて『エースをねらえ』を観直してみると、当時の枠組みで可能な範囲で、ジェンダー問題等々にもかなり挑戦的に取り組んでいたことがわかるから、そこのところは過小評価してはいけないだろうねぇ」

「『岡には女を超えてもらう』みたいな宗方コーチのセリフとか、何より、まずもって女性主人公なこととか?」

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「うん。それから、特に1979年公開の『劇場版エースをねらえ』は《スポーツ》《根性》よりも《青春》に重心を置いて組み立てられているせいもあって、高校生がひたむきに何かに取り組む様子は、思った以上に【なんだ、今も昔も、そんなに変わらないじゃん】という印象も強かったりする」

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「学園、青春。そして友情、努力……。そういうのってじつはものすごく普遍的なんだね」

青春時代の尊さは昔も今も変わらないんだ……」

「……というわけなので、ボクたちも、自分たちの小説本編の生活に戻ろうか」

「そういえばミサキの誕生パーティがもうすぐだね」

夏休みになったら臨海学習会。いよいよ序盤のヤマ場ね。……しっかり思い出つくりましょ♪」

「ではでは皆様、また~(^^)ノシ」



  

  

  

  

  §全7巻§


◇◇


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