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[2:天空の城ラピュタの凋落]プリキュア時代の「男の子アニメ」の困難 [メディア・家族・教育等とジェンダー]

2013年の10~12月に放映されたアニメ『ガリレイドンナ』は、ガリレオ・ガリレイの子孫にあたる三姉妹が、政府機関さえ動かす力を持つ黒幕の大企業や空中海賊の一味に追われながら、謎に包まれた先祖の遺産を探すというストーリーでした。

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§画像は放送画面より。この一連の記事中同じ

このあらすじを最初に知ったとき、私はどことなく、宮崎駿監督作品にしてスタジオジブリアニメの代表作のひとつでもある『天空の城ラピュタ』を連想しました。

ある意味『ガリレイドンナ』は、いわば「大胆な脚色を加えてリメイクされた今どきの天空の城ラピュタ」だったと言えるかもしれません。

※この他このクールでは、『凪のあすから』が「大胆な脚色を加えてリメイクされた今どきの崖の上のポニョ」、『のんのんびより』が「大胆な脚色を加えてリメイクされた今どきのとなりのトトロ」であったような気がするとかしないとか……(笑)

『ガリレイドンナ』では、三姉妹の移動手段であり、家であり、追手に反撃するための武力でもある金魚型の飛行艦艇「ガリレオ号」を設計・制作したのは、メカ大好き少女である三女の星月ちゃん。
ガリレオ号の他にもいくつもの発明品があり、それを裏打ちする理論面での学識も相当なレベルです。

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このように、いわゆる「リケジョ」――理系女子のひとつのあり方がキチンとアニメキャラとして好ましく描かれていた点は、ジェンダー観点で評価した場合にも非常に意義深かったです。


  


一方、本家『天空の城ラピュタ』のほうはどうなのでしょうか。

2013年の夏、新作『風立ちぬ』の劇場公開を盛り上げる一環で、宮崎駿監督ジブリアニメの過去作がテレビ地上波で放送された中に『ラピュタ』もありました。

『ラピュタ』はすでに何度か観たことがありますし、映像ソフト化もされ、レンタルもされていますから、その気になればいつでも見れるっちゃー見れるのですが、このときはたまたまタイミングが合って、ひととおり視聴することとなりました。

ジェンダー観点で評価すれば、『ラピュタ』の前作である『風の谷のナウシカ』をはじめ宮崎駿監督作品には女性主人公が主体的に活き活きと活躍するものが相応に多い中で、この『ラピュタ』は相対的に、男の子のパズーがかよわい女の子であるシータを守って奮戦するという趣が多分に濃厚な点がマイナス部分なのは確かです。

さりとて、そういう小難しい案件をひとまず横に置くなら、この『天空の城ラピュタ』は傑出した冒険活劇であり、宮崎駿監督作品として、スタジオジブリアニメとして、屈指のエンターテイメント作品である――、


……そう思っていた時期がワタシにもありましたw


ぃや、この2013年夏のオンエアで『ラピュタ』を見直すと、マジなんか違いました。
記憶の中にある印象ほどには、面白くないのです。
むしろつまらない!?
どうも視聴者としてカタルシスを得られる展開になってくれないのです。

シータはたしかに芯の強さを持った女性キャラクターです。
宮崎駿が言うように、意味もなく水浴びに行っては悪者に誘拐されたり、いざというときには「キャーッ」と悲鳴を上げて卒倒して後は主人公(←男性)の足手まといになるだけのヒロインではありません。
しかし、じゃあ何をするかといえば結局は勝ち誇るムスカに向かって気丈に睨みつけながら「卑怯者!」などと罵倒する程度。
この点、あらかじめわかっていたはずのこととはいえ、やはり何かもどかしく物足りません。

そしてパズー。
シータのために獅子奮迅の大活躍をするはずの男・パズーさえ、よくよく見ると、たいして何もしていなかったのです。
どっちかというと状況に流されるまま、その場しのぎの行動をしているようにさえ見受けられます。

いやはや、なんということでしょう。

これは、ひとつには久しぶりの複数回目視聴だったことも基本的な一因と考えられます。

また、私自身のジェンダーやセクシュアリティに関する知見の蓄積によって、その方面からの鑑識眼が高次元化してきたこととも背景にはあるでしょう。

しかし、今回のもっとも大きな原因は、やっぱりおそらくはアレです。
すなわち前記事の『聖闘士星矢Ω』の問題とも通底する、いわば「プリキュアシリーズを見慣れてしまったことによってプリキュア的展開がスタンダードになってしまったモンダイ」。(^^)

それが『天空の城ラピュタ』から受ける印象を大きく変えてしまったのではないでしょうか。

思えば『ラピュタ』とは企画のルーツを辿ったときに母体を同じうする『ふしぎの海のナディア』の「デジタルリマスター版」が2012年度にNHKでオンエアされたのを視聴したときも、同様の感想を抱いたものです。

まぁ、そうですよね~。
今なら『ナディア』にせよ『ラピュタ』にせよ、絶対ナディアもシータも、ブルーウォーターや飛行石の力でプリキュアのような何かに自分で変身して自分で戦うでしょうからねー
(^o^;)
(ついでに付け加えるなら『未来少年コナン』のラナも。彼女の場合そもそも「博士の孫娘」であり、しかも「超能力者」。絶対にそのスジの属性持ちではありませんか!w)

つまるところ、『プリキュア』はおろか『セーラームーン』さえまだだった『ナディア』や『ラピュタ』(および『コナン』)の時代的な限界ということなのでしょう。

ともあれ、こうした『天空の城ラピュタ』のような名作の誉れの高い作品の評価さえ変えてしまいうるプリキュアシリーズの影響力。
相当に侮れないものなのかもしれません。

◎というわけでプリキュア時代の今風にリメイクした
『天空の城ラピュタ1889』 by佐倉智美、考えてみました(^o^;)
(舞台が1889年ってのはナディアのほうの設定から借用)

身寄りのない少女シータは、謎のあしながおじさんの厚意で全寮制の女子中学校に通っている、聡明で闊達、かつ友達思いの心優しい少女だった。
シータがじつはラピュタ王国の末裔であるという事実を知っているのは、「謎のあしながおじさん」の正体であるムスカのみ。ムスカは厚意で学費を出すと装って、シータを自らの目の届くところに置いているのだった。

そんなシータの親友にしてルームメイトは、アリス・パズー・ヨツバ
大財閥の一人娘で、物心両面からシータの支えとなっている。

「ねぇシータ、今日は日曜日で、学校の行事も何もありませんわ。よかったらいっしょにお買い物に行きませんか?」
「ありがとうアリス。ぜひ行きたいわ」

ある日、そうやって出かけようとしたシータたちに、空中から飛行戦艦が立ちはだかる。
ラピュタを再起動するための三種の神器のうち2つまでを手に入れたムスカの依頼で、残りの1つを回収するために雇われた空中海賊の一味だった。

飛行戦艦から空中ディンギーで地上に降り立つ海賊たち。
そのキャプテンと思われるのは以外な人物だった。

「ど~も~、キャプテン・マリカでーす。三種の神器の残りのひとつ。いただきにきましたー。とっとと渡しちゃってくださ~い!」

なんと、同じ学校の高等部の先輩で、空中ヨット部の部長でもあるイケメン女子高生、マリカ・ドーラ・カトウではないか。

(中略)

「お願い、飛行石に三種の神器、もう少しだけ私に力を貸して!」

リュシータ・トエル・ウル・ラピュタギアを身に纏って、さしずめ「伝説の戦士」とでもいった姿に変身したシータの神々しい輝きは、さらに増していた。

コントロールを失ったロボット兵が迫ってくるのを、できるだけ優しく排除しながら、シータはラピュタ中枢部をめざして飛ぶ。
先刻の軍隊との一戦での、一般の兵士たちに極力危害を加えずに戦力を殲滅する匙加減とは、またちがった難しさだ。

ラピュタのエネルギーコアの暴走は、更に進んでいた。
周辺の重力場さえ歪めながら強力な電磁パルスを撒き散らしている。

「弁天丸、聞こえる? シータさんを援護、ロボット兵を引きつけて。それから軍隊がバカなことしないように威圧しといちゃって」

マリカが軍艦の甲板上から飛ばした通信はなんとか届いたようだ。

同じように自分の端末を操作していたムスカは、通信が途絶したと知るやいなや端末を投げ捨て、そしてマリカたちに向かって叫ぶ。

「おい、ヤツはどこへ向かっている? 何をしようとしているんだ!?」

アリスがゆっくりと一歩前に出ると静かに口を開いた。

「シータがよく話してましたわ。おばあちゃんからいろいろな呪文を教わったって……。その中には普段は絶対に使ってはいけない封印の呪文……、いわばすべてを無に帰する滅びの言葉もあったとか」

「な、なんだと」

驚くムスカに少しだけ顔を向けると、マリカは言葉を継いだ。

「シータさんは、それを使ってこの場を収めるつもりなんでしょうね」

「そ、そんな、この貴重なラピュタの……すべてを無に帰するだと? ぃやダメだ。ダメだ、絶対にダメだ」

ムスカは狼狽した。

「そ、そうだ海賊! オマエなんとかしろ、ヤツを止めろ、封印の呪文など使わせるな!」

しかしマリカは応じず、その場を動こうともしなかった。

「お、ぉい、雇い主の命令が聞けないのか!」

苛立つムスカの恫喝。
それでもマリカは微笑をもって、それを受け流した。
代わりに説明を引き受けたのはアリスだった。

「……残念。じつは少し前から雇い主が変わったんです」

「な、なにぃ?」

マリカの後方で静かに微笑みながらアリスは続けた。

「こちら、私とマリカさんとの間の契約書ですわ」

アリスがおもむろに取り出した書類を掲げる。

「ば、ばかな。俺との契約はどうなる。……ぉ、おぃ海賊、契約の途中放棄か!? そんなことをしたらどうなるか、わかってるんだろうな」

これにも直接回答したのはアリスだった

「こちらはアナタとマリカさんの契約書。この17条に定められているとおりの違約金、すでにヨツバ銀行のアナタの口座に振り込み済みです。こちらがその証書……」

「なっ……」

「これで法律上、何の問題もありませんわ」

表面上はぽかぽかした陽だまりのような笑顔でそう宣告するアリス。ムスカは歯ぎしりしたが、もはやどうしようもなくなっていた。

「こ、この小娘ども……」

マリカはそんなムスカを念のため拳銃で牽制しながら釘を差した。

「そんなわけですから、シータさんの邪魔はさせません。しばらくそこで地団駄でも踏んどいちゃってくださ~い」

この間にシータはラピュタのコアブロックに到達していた。

「リテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール」

シータのラピュタギアが金色に輝き、コアブロック内部への動線が開く。

「これ以上……ラピュタの力を、これ以上、悪い人に利用されたくない。かわいそうなロボットの兵隊さんたちを、もう苦しめたくない」

シータは思いを巡らせた。

「……そして世界中に、昔の私のような悲しい思いに囚われる人をいないようにしたい。平和に、みんな楽しく、アリスやマリカさんといっしょに暮らしたい!」

煮えたぎるように渦巻くエネルギーコアの核心が目の前にあった。

腕を伸ばし、掌をかざすように掲げたシータは、渾身の願いを込めて唱えた。

「……バルス!」

(後略)


なんか各方面から叱られそうな気がしてきた(^^ゞ
(スミマセン、スミマセン;)


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