SSブログ

◎執筆・講演のご依頼はお気軽にお問い合わせください◎
メール案内ページ
「LGBT」など性的少数者の人権、セクシュアリティの多様性、クィア論、男女共同参画などや、そうした観点に引きつけてのコミュニケーション論、メディア論、「アニメとジェンダー」など、ご要望に合わせて対応いたします。※これまでの実績などはお知らせブログにて

久しぶりの公的科学戦隊であるゴーバスターズにはがんばってほしい [メディア・家族・教育等とジェンダー]

日曜朝の戦隊シリーズ、話題になった『海賊戦隊ゴーカイジャー』の後を受けた「36番目のスーパー戦隊」として、この2012年度に始まったのが『特命戦隊ゴーバスターズ』です。

脚本には『侍戦隊シンケンジャー』でも筆を揮った小林靖子を迎え、今までにないテイストも意識して作り込まれた意欲作と言えます。

地下の秘密基地から発進する巨大メカはかっこよく描かれ、CGを併用したロボットのアクションも見応えのある映像に仕上がっています。

戦隊が属する組織のスケール感も、司令官やサポートメンバー、メカの整備担当などのさまざまな人員が登場することで、明示的に描かれているといえるでしょう。


で、それらを見ても、ひとつ言えるのは、作品世界の立脚点「科学か魔法か」および「公か私か」について、旧来においては男の子向け番組はそれぞれ前者寄りであり、後者は女の子向け番組の専売特許のごとき状況だったのが、近年はその構造がうやむやになり、後者立脚のスーパー戦隊も珍しくなかったところが、今般さらに1周まわって、公的な科学戦隊の方向にいちじるしく回帰したことです。

【参考】→「戦隊ヒーローの科学離れ

上記リンク先記事でも触れていますが「はやぶさ」の帰還がひとつの科学回帰の契機とはなったかもしれません。
『仮面ライダーフォーゼ』も宇宙を扱っていますし、他局では『宇宙兄弟』もアニメ化され、(土曜深夜名目の『モーレツ宇宙海賊』を翌早朝と解釈し、星座がモチーフの『聖闘士星矢Ω』まで入れると)日曜の朝はまさに宇宙だらけになっていたりもします。


2000年台には『魔法戦隊マジレンジャー』を筆頭に、その超常的パワーの源泉がファンタジー系である戦隊が主流になっていましたし、公的機関所属の戦隊も『特捜戦隊デカレンジャー』より前は1990年台まで遡ることになり、『ゴーバスターズ』のような味方組織というのは2006年度の『轟轟戦隊ボウケンジャー』以来となります。

純然たる現代科学による(よりもちょっとだけ進んだ)テクノロジーのみで戦う公的機関所属の戦隊となると、――しかもメンバーがその機関専属となると、はたしていつ以来となるのでしょうか?
※メンバーが高校生でもあった『電磁戦隊メガレンジャー』を外すと、1997年からさらに遡行が必要になってしまう


それゆえ、そんな昔なら(つまり例えば『秘密戦隊ゴレンジャー』とかでは)当たり前だったはずの設定が、逆に新鮮な雰囲気に感じられる『特命戦隊ゴーバスターズ』。

「科学か魔法か」や「公か私か」が、単純に男の子か女の子かで分断され、両者が相容れない存在となってしまう状況は、むろん好ましくなかったのですが、かといって全部の作品が「魔法」で「私」ばかりになってしまってもつまらないです。

ぜひここはひとつ久々の「公的科学戦隊」としてがんばってほしいところですね。


   


◎ ………なのですが、イマイチこの『特命戦隊ゴーバスターズ』、視聴継続のモチベーションが上がらないのはワタシだけなのでしょうか?
理屈の上では面白いポイントが多数ある意欲作のはずなのですが、なぜか物足りない、見ていて燃えない。
つまるところ、ヒーローとしての熱さがない、伝わってこないんですねぇ。
あとひと工夫、来週もまた見たい・早く見たいと視聴者に思わせる「何か」が付加されれば、絶対にもっと盛り上がるはずなんですがが…。


◎そして (2012/06/28) ソバスチンさんからのコメントでの情報(ありがとうございました)にもあるとおり、『フォーゼ』の次の仮面ライダーが、なんと『ウィザード』! つまり魔法使い
まぁ戦隊ではすでに7年前にズバリ『魔法戦隊マジレンジャー』という前例がありますし、仮面ライダーにおける近例でも『キバ』や『オーズ』はかなり魔法寄りのテイストでしたから、今さら「え゛っ、男の子向けヒーロー番組で魔法!?」みたいな驚きはないですが、とはいえ宇宙を扱い科学シフトだった『フォーゼ』から一気に魔法ライダーとは…。
いゃ、むしろ戦隊も『ゴーバスターズ』で科学回帰な中でのバランス感覚と言うべきなのかもしれませんね。
これで来年度のプリキュアが科学プラスで地下にある政府管轄の秘密基地に司令官がいたりしたらカンペキだw
しかし、こうなると男の子向け・女の子向けを科学か魔法かで仕切るのはもはや無理です。
境界が揺らいでいるどころではなくて、明らかに混沌としちゃってます。
……おまけに『仮面ライダー ウィザード』がベルトと併せて使う変身アイテムは[ 指輪 ]というのは、魔法モノとしては必然的ですが、ソレでバンダイが玩具展開するわけですよねぇ。
ということは、9月になったら、男の子が指輪を欲しがるという事態が、そこかしこに平然と現出するわけですナ(^^)v


 

 


コメント(6)  トラックバック(0) 

コメント 6

コメントの受付は締め切りました
ソバスチン

私としては「今こそ科学戦隊をやるべき」という気運が高まるのは必然かなと思います。
この『特命戦隊ゴーバスターズ』はいわば「エネトロン」というエネルギー政策の元にストーリーが作られています。
昨年の震災、福島原発事故、原発の信頼性への疑問、電力不足の危機、再び注目を浴びる再生可能エネルギー。
敵メガゾードに容易く狙われるエネトロンタンクに突っ込む視聴者も居ますが我が国のこれまでの原発政策を鑑みれば返って自然です。
13年間ヴァグラスが攻めてこない状況を考えれば、GBという防衛組織が維持できた事自体奇跡かもしれません
本当にリアルな世界なら世論に抹殺されるか、大幅に予算削減でしょう。
(この辺のリアルな事情はロボットアニメ『地球防衛企業ダイ・ガード』で更に突っ込んで描写されていますが)

戦隊で「科学離れ」が起きるのはやはり、一般人レベルでは科学に失望しているという事情もあるのでしょう。
物質消費本位な経済成長にも陰りが見え貧富の差を生み、情報物流産業の発達による家族、隣人とのコミュニケーション不足
それらを背景にした戦争、テロ、犯罪etc
確かに産業革命以降あった「科学信仰」が揺らぐのは必然です。
その反動で生まれたのがオウム真理教のようなカルト新興宗教であるともいえます。

今年は奇しくも『グスコーブドリの伝記』も劇場公開されます。
人類は今一度、科学について見直さなければいけない時期なのではないでしょうか?
科学者や専門家の目線ではなく、一般人の目線も加えて。


…まぁそういったお堅いことは抜きにしても…私は結構気に入っているのですがw
このゴーバスターズは個人的に科学戦隊というより『レスキューポリスシリーズ』のテイストが強い気がします。
そもそもメインライターの小林靖子氏がこの世界を志すきっかけになったのが
レスキューポリス代1作『特警ウインスペクター』です。
当時一介の会社員に過ぎなかった氏がこの特撮に感銘を受け
自身でオリジナルのプロットを執筆しテレ朝の「ご意見感想」の便りとして送ったぐらいですw

当時の私は小学校低学年でしたがスーパー戦隊よりレスキューポリスの方が好きでした。
親にせがんだ玩具もそちらばかりでした「DXウインスコード 」 とかw
多分それ以前に『西部警察』に嵌ったことも大きかったかもしれません。
小年が憧れる「大人っぽさ」があったんですよ、レスキューポリスには。

とは言え確かにレッドである桜田ヒロムの性格に問題がありますよね
悪い意味で現代的というか…
本編での熱血要素や破天荒な部分を今現在、追加戦士の陣マサト/ビートバスターが
一手に引き受けている感もありますし。
今週のメカアクションは全てのバスターマシンに見せ場があって中々好きなのですが…。
by ソバスチン (2012-06-24 17:45) 

ソバスチン

あっ! あと余談ですが、私『公的戦隊』が一瞬『公認戦隊』に見えましたw
今期BS朝日&MXで放送中の東映セルフパロディー特撮
『非公認戦隊アキバレンジャー』では正規のスーパー戦隊を
『公認様』と呼んでいるからです。
「制作会社が本気でセルフパロディーを作るとこうなる」
という気概に満ちた作品です、正直最初は舐めてましたが
1話を見た瞬間、そんな先入観は吹っ飛びましたw
秋葉原の展示ルーム(JR線のガード下にある)で
アキバレンジャーの等身大スーツが展示されていたのをたまたま見ましたが意外と格好よくて驚きました!
by ソバスチン (2012-06-24 23:55) 

tomorine3908-

ソバスチンさま
コメントありがとうございます(ガンダム記事ともども)
アセム・アスノおっさん化は聖闘士星矢Ωでアンドロメダ瞬が親世代になっても変わらず若々しく麗しかったのと対照的ですねw
そしてアキバレンジャーとの空目はさすがに意識せずに記事書いてました(^^ゞ
で、ゴーバスターズですが、確かにエネルギー問題を扱い、科学と人間の関係を再考するような物語は、まさに今が作り時なのはおっしゃるとおりだと思います。
小林靖子氏の脚本はじめ、制作側にはおそらくそうした気概があるのだというのは感じられます。
ただソバスチンさまのご指摘と同様にに、私も第1話で「なんか戦隊モノというよりメタルヒーローシリーズっぽいテイストだったなぁ…」という感想を抱いたような、毛色の違いを感じた視聴者が少なくない様子はネットに散見されるところです。
つまるところゴーバスターズへの違和感の大きな原因のひとつは、ゴーカイジャーという戦隊らしさの集大成のような作品の直後(だからこそ新機軸が目指される意義や動機もあるといえばあるのですが)ということともあいまって、そうした「戦隊らしくなさ」に対する、この時間・この枠で見たいのはコレじゃない感なのだと思います。
それで視聴者を逃しているとしたら、やっぱりちょっともったいないんですけどねぇ。


by tomorine3908- (2012-06-26 16:58) 

ソバスチン

どうも、度々失礼しますm(_ _)mソバスチンです。
先日仮面ライダーの新作発表がありましたね。
その名は『仮面ライダーウィザード』魔法使いとは。
現在のフォーゼの「宇宙科学」に対して極端に魔法使いライダーを持って来るとは…。
しかも、変身には指輪を使うということで、微妙にスマイルプリキュアのキュアデコルと被せてる気もします。
聖闘士星矢Ωの記事で佐倉様がおっしゃった通り(私、星矢は嵌まらなかったので恐縮ですがf^_^;)
「特撮ヒーロー寄りにしたプリキュアなのに特撮ヒーローがプリキュア寄りになる。」
という逆転現象が発生したのかもしれません。
(結婚指輪を除けば)「日本男児がファッションで指輪なんて…」という
男女の固定観念がアニメや特撮から取り払われつつあるのは確かなようです。
by ソバスチン (2012-06-28 12:33) 

QuarrelBlue

「男の子が指輪を欲しがるという事態」で思い出したのですが、(ウルトラシリーズの中でも空手・スポ根ブームの影響が強く、特に序盤ではジェンダー規範的な「男らしさ」への傾倒が目立つ)「ウルトラマンレオ」でも変身アイテムは「指輪」なんですよね。
(掲載していたサイトが消えていて立証困難なのですが、放映当時の玩具では通信機型トイの付属品として販売されていたとか)

#ジェンダー規範的な「男らしさ」といえば、レオは第一クールのサブタイトルが凄いことに……。

ちなみに、今更からしれませんがウルトラシリーズで「変身アイテムが指輪」というのはこれが初めてではなく、男女合体変身で有名な「ウルトラマンA」が指輪を変身アイテムに採用しています。
(「男女合体変身」というコンセプトは否定的に見れば性別二元論的という批判も出そうですが、本来は「超人をジェンダー超越的存在として描く」という意図があったとか。諸般の事情で完遂されなかったのは惜しまれるところですけど。ちなみに、ジェンダー超越的存在なのに「マン」がつくのは、当初予定していた「ウルトラA」の名称に商標の問題が判明し緊急の名称変更を余儀なくされたからだそうです)
「手に装備するが手が塞がらないアイテム」である指輪は「互いの手を合わせる」モーションの邪魔にならず、なおかつ手を強調できるので、二人が手を取り合って変身する合体変身とは相性が良かったのかもしれません。
(そこから考えると、空手ブームの影響が大きいレオの変身アイテムが指輪なのも「空手モチーフの変身モーションを阻害することなく手を強調する」ということでむしろ必然?)

他にも、指輪から現れる特撮ヒーローとして「光の戦士ダイヤモンドアイ」があり、調べてみたらスーパー戦隊の「電子戦隊デンジマン」も指輪が変身アイテムでした。
スーパーヒーローの装具として指輪が「女々しい」という感覚は、もともとそれほどなかったのかもしれません。
(なぜそうなのか、はよくわからないのですが。「千一夜物語」でアラジン最大の危機を救った指輪など「魔法モノとしては必然的」であるがゆえに御伽話などを通じて子供向け作品における「科学系魔法系・男児向け女児向けといった区切りを超えた超常パワーの象徴」として定着していたということなのでしょうか?)

#そもそも、スーパー戦隊に限定しなければ「男児向け」魔法・オカルト系ヒーローも「悪魔くん」「河童の三平」から「レインボーマン」「コンドールマン」、「カゲスター」「ダイヤモンドアイ」などなど昭和時代から前例はいろいろあり、必ずしも「男女共同参画の進展に伴って急に出てきた」ものではないようにも思えます。むしろ「女児向け」科学ものが「ミラクル少女リミットちゃん」など少数に留まっていることが大きいような……漫画版が「ちゃお」別冊付録から単行本化された「電脳コイル」辺りは「女児向け」扱いになるでしょうか?
by QuarrelBlue (2012-08-19 10:16) 

tomorine3908-

QuarrelBlueさま
コメントありがとうです
まぁもともと「結婚指輪」なんてのは男女ともするものですし、「探せばあるジェンダークロスオーバー的な作品」との親和性が高いのもご指摘のように納得のいくものですね。

余談ながら、ウルトラマンレオのサブタイトル、ちょっとググってみたら、マジ1クール目が壮絶に「男!」のオンパレードですねぇ…。
リアルタイム放映時に小学生だったワタシは、タロウまでの作風とのあまりの乖離についていけなくなって、レオの視聴は5話くらいで打ち切ったのですが、あらためてその理由に得心がいきました。
やっぱ無意識に忌避してたんですね
by tomorine3908- (2012-08-19 15:09) 

トラックバック 0

 
§ amazon.co.jp へのリンクウィジェット跡について §
佐倉智美の著作や記事中で言及・紹介したコンテンツ等にアクセス・購入される際の便宜として各所に配置しておりました[amazon.co.jp]へのリンクウィジェットが、仕様変更で機能停止して現在はウィジェットがあった跡の枠だけが表示される状態です。ご留意ください(一部については撤去・改修済み)。
なお代替となるリンクウィジェット集も新設しましたのでご活用ください。
→[「佐倉智美の著作一覧」佐倉ジェンダー研究所web令和本館 ]