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3世代目キオ編でも引き続き女性キャラの扱いが酷い機動戦士ガンダムAGE [メディア・家族・教育等とジェンダー]

『機動戦士ガンダムAGE』における女性キャラの扱いは、3世代目主人公のキオ編に入っても、やはり酷いと言わざるを得ません。

医療の分野に自ら生きがいを見出したはずのユノアも、もはや次世代編の主人公を産む役回りから解放されているはずのウェンディも、補助・ケア労働要員としてしか(あるいはまったく)画面に登場しません

突如の大抜擢に戸惑うナトーラ艦長の成長物語さえ、軍を退役したのにいまだに煩く口を出してくる第1世代主人公フリットの老害パワーハラスメントの前に、気持よく開花することはありません。

だいたい同じ「宇宙艦船の新米キャプテン」なのに、加藤茉莉香@モーレツ宇宙海賊が必要な決断を時宜に応じて下していくことが持ち味となっているのに対して、ナトーラ・エイナスにそれができないのは、本人の資質というよりは、周囲にいる年長者の態度・接し方によるところが大きいのは誰の目にも明らかです。

それに、そもそも制作側がナトーラ艦長の成長物語をきちんと描く気があるのかという点も、はなはだ疑問です。

やっと真っ当にキャラ立ちしてる女性キャラ登場!と思ったら、いきなりシャナルアさん戦死しちゃうし……。


   

 §巷の噂ではアニメ本編のgdgdを小説版が絶妙に補完しているとのこと


そしてそんな制作側の、男女二分的で男性中心的な価値観が極まったなという描写が、去る33話にありました。

――戦闘で敵からの攻撃を受け揺れる母艦の中で、ゆえあって同乗しているユウ・タク・ルッカの幼児3人組(ファーストガンダムにおけるカツ・レツ・キッカみたいなものです)は怯えて震えています。

そうしてついに泣きだしてしまったタクに対して、3人の世話を担当しているウェンディは……

「泣かないの、男の子でしょ


……………………。

いゃいゃコレはダメでしょう!

念のため注釈するなら、ウェンディがそういうキャラなのではなく、脚本がそのように言わせている

しかも直後にハロに「オトコノコ、オトコノコ」とリピートさせているのも悪質です。


まぁ世の中が性別で仕切られている現実がある以上、ある程度は「男」「女」に依拠したセリフが登場するのは不可避です。

しかし、ここで「男の子」を持ち出す必要はないのです。

例えば『スマイルプリキュア』16話では、キュアマーチこと緑川なおチャンが転んで泣く弟を諭す際には、相手の属性ではなくきちんと個として接しており、それでちゃんと問題を解決させています。

だいたいにおいて、その場で「してはいけない」こと(あるいは「すべき」こと)があるとしたら、そのことに「男女」は関係ないのです。

しかもあの場面は、「(女の子のルッカだって泣いてないんだから)男の子のタクが泣くのはダメよ」的なニュアンスで言われています。

これはまさに、相手のありのままを否定し人格を傷つける、最も言ってはいけないパターンの「男の子でしょ」の典型ではありませんか!

このようにして少なからぬ男の子が自己肯定感を下げ、そして男の子全般が感情を押し殺しあった果てに暴力的で支配的な関係性へと傾斜していくのは、NPO法人「SEAN」の調査研究結果を読むまでもありません(←あっ…ぃや、読んでください(^^))。

もぅ思わずオンエアを見ながら、【 男の子は出生時に割り振られた性別に根拠した規範圧力によって、泣きたいときにも泣けないことを強いられてるんだっ! 】と叫びたくなったくらいです。


ともあれ、こうした部分に制作側の意識がはしなくも表れていると言えます。

このような描写を無神経におこなっていることに気づかず、性別規範で視聴者をディスパワーして平気なようでは、この先も期待が持てません。

まさに『機動戦士ガンダムAGE』こそが、本当の意味での「子どもに見せたくないアニメ」だという様相を呈してきました。


 


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コメント 1

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ソバスチン

シャナルアさんの退場、その後のH氏の言い訳はホントにドイヒーでした。
よりにもよって、富野由悠季御大にその才能を見出された朴路美さんにあんな
使い捨てキャラを演じさせるとは…その後のキオにもこれといった変化は無いですし。
富野御大はAGEヒロインズで「スカートめくりしたい(キエル嬢について)」
「×××したい(クェスの事です)」と思わせるキャラは居なさそうですw
少々下品でしたか…申し訳ありませんm(_ _;)m
http://blog.livedoor.jp/qmanews/archives/51957794.html
↑H氏は富野御大から何を感じ取ったのかは不明ですが、おそらくかみ合っていなかったでしょう。
ファンである私ですらあの人の事が分からなくなる時がありますからw

朴さんだけではなく、その他キャラのキャスティングにも疑問が…。
アセム役も江口拓也さんから鳥海浩輔に変えて無理に渋さを出そうとしてたり
(洗脳の解けたエレンを『漂白』とするならコチラは『汚し処理』でしょうか?)
ユノア役も大亀あすかさんからエミリーの遠藤綾さんに…
「婆さんは用済みだ。知名度のある遠藤を露出の多いキャラに演じさせよう。」
という、魂胆が丸見えなのですが…。

「母性の富野由悠季、父性の高橋良輔」なんてオールドアニメファンでは言われていますが
AGEはどちらもダメせすねw
父性やダンディズムを描くにしても「背中で語るべき」という部分が欠けているように見えます
『ボトムズ』初め高橋監督は女性の描写が苦手とよく言われますが
キリコを愛したフィアナは過酷な運命さらされたとはいえ決しで不幸ではなかったと思います。
一度彼を愛したココナや彼に敵対しながらも意識せざるえなかったテイタニアも…。
(私たちファンの願望かもしれませんが…)
AGEの彼女達は明らかに不幸を通り越して全く感情移入できませんから…。
by ソバスチン (2012-06-24 15:53) 

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