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海賊戦隊ゴーカイジャー「宇宙最大のお宝」の正体 [その他雑感つぶやき]

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★ めざせ地図にない場所を、幻なんかじゃないんだ ★
★ たったひとつ、自分だけの宝物、誰も探してる ★
★(「海賊戦隊ゴーカイジャー」作詞:岩里祐穂 より)★

本年度の戦隊シリーズ『海賊戦隊ゴーカイジャー』、シリーズ通算35作目記念作品として絶好調のうちに、はや番組は折り返し点を過ぎ、物語はますますの佳境となっております。

ゴーカイジャーの面々というのは、当初は「宇宙最大のお宝」が、どうやらこの辺境の惑星・地球にあるらしいということでやってきただけの、宝探しが目的の宇宙海賊ご一行様でしたが、おりしも地球侵略に来た宇宙帝国ザンギャックとひょんなことから対立する行きがかりとなってしまい、また「宇宙最大のお宝」を手に入れるためには、今までの歴代34戦隊の「大いなる力を入手することが必要と知らされたために、さまざまな過去戦隊のメンバーとの交流も経たことで、昨今はなんとなく地球を守って戦うことの意義に気付きはじめている今日この頃といったところでしょうか。

6人目の追加戦士ゴーカイシルバーとして地球人の 戦隊オタク 歴代戦隊の知識に詳しい青年を迎えたことも、その意味では大きなターニングポイントだったかもしれません。


で、そうなると、そもそもいったい「宇宙最大のお宝」とは何なのか!? というのも、あらためて気になってくるこの時期であります。

ここまでの流れをふりかえって見てみると、案外シンプルに「それは地球を愛する心だ!」なんてオチになりそうな予感もしないではないのですが、まぁあくまでも子ども向けヒーロー番組ですから、そういう王道展開であっても許せるというか、それこそが望ましいというのも建前です。

◎アニメ版人気海賊もの『ワンピース』の「ひとつなぎの大秘宝」のほうについても、ファンの間では様々な予想が候補として語らているようですが、こちらに関しては、もっと何らかの具象物であることが原作者によって示唆されているらしいです。
その点も踏まえての、この「ひとつなぎの大秘宝」――ワンピース――の正体についての私の仮説なら、ツイッターでのお馬鹿ツイートを参照(^^ゞ
http://twitter.com/#!/tomorine3908tw/status/113606860854140928

ここまで非常に上手いつくりで幅広い層から好評の『海賊戦隊ゴーカイジャー』にあっては、そのへん含めて可能な限り、子どもも大人視聴者もともに納得できて、かつ世間的にも好ましく受け止められる「三方良し」的な決着を期待したいところですね。


ただ個人的に、この戦隊シリーズ35作目記念作品において、歴代34戦隊の「大いなる力」を入手することで顕れるという「宇宙最大のお宝」の正体について、あれこれ考えを巡らせてみたのですが、その結果、あることに思い至りました。

それは、シリーズ中の1作品単体において宝探しがおこなわれているのではなく、連綿と続くシリーズ全体の流れとの関わりの中での「宝」というところにある種の大いなる意味があるのではないか? という点です。

それを象徴するのが、オープニング映像中の、キャプテン・マーベラス(ゴーカイレッド)が佇む傍らを歴代レッドが駆け抜けていき、最後にゴーカイレッドのイメージがマーベラス自身に重なるという演出。

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まず『ゴレンジャー』のアカレンジャー

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それに続く歴代レッドたち

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直近のゴーオンジャー、シンケンジャー…

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ゴセイジャーが通り過ぎた後ゴーカイジャーのレッドが

※画像はユーチューブ動画より
http://youtu.be/Ow_TnVUloko

はたしてこれの意味するところは何でありましょう?

もちろん35作目記念作品として過去34作品をフィーチャーすることで、ゴーカイジャー自体も盛り上げつつ、戦隊シリーズというコンテンツ全体の価値相場を高めようという、営業的な企図は別な次元にあるでしょう。

しかしそれも含めて、この駆け抜けていく歴代34レッドというのは、シリーズが経てきた年月、重ねてきた時代の蓄積そのものとも言えます。

そうして、シメとして現行戦隊がソレを受けるということは、その果てに現在がある、現在というものが、積み重ねられた過去の歩みの上に現在が成り立っている――ということを表してはいないでしょうか。

したがって、歴代34戦隊の「大いなる力」と関わりがあるとされる「宇宙最大のお宝」の正体も、そうした34作品に及ぶ歴史の中で受け継がれ、培われてきたものと密接なつながりがある、もしくは、そんな現在に繋がる過去の蓄積そのもの――という考え方が可能になります。

作中での「宇宙最大のお宝」の謎解きが、そのような考えに則っておこなわれれば、ワタシとしては嬉しい限りですが、最終回がまだ数ヶ月先の現時点では期待の域を出ないですね。


そして、視聴者の側からこの件を裏返して見てみると、なんとそこに作品からの重要なメッセージを読み解くこともまたできます。
それは案外、重要な隠しテーマとして『ゴーカイジャー』の基底を成しているのかもしれません。

例えば『秘密戦隊ゴレンジャー』が始まった1975年、個々の視聴者もまた、それぞれの場所で、何かをして生きていました(まだ生まれてなかったとかゆー申告は却下!(^o^;) ちなみにワタシの場合は小学生)

以降、『ジャッカー電撃隊』のときも、『バトルフィーバーJ』のときも、『電子戦隊デンジマン』のときも同様です。

はたまた1981年の『太陽戦隊サンバルカン』、1982年の『大戦隊ゴーグルファイブ』…(中略)…1997年の『電磁戦隊メガレンジャー』においても然り。

さらに1998年『星獣戦隊ギンガマン』、1999年『救急戦隊ゴーゴーファイブ』を経て、『未来戦隊タイムレンジャー』で世紀を超え…(中略)…『侍戦隊シンケンジャー』の2009年、『天装戦隊ゴセイジャー』の2010年に至るまで、各々の視聴者は、常に、どこかで、何かをしながら生きていたのです。

その道筋は、中には順風満帆、幸せ全開、春爛漫な時期もあったかもしれませんが、逆に陰陰滅滅、絶体絶命、臥薪嘗胆、艱難辛苦に満ちたところも(あるいは「ほどほど」「ぼちぼち」な年も)あったにちがいありません。
また、順調な周期や苦悩の周期にしても、それぞれの具体的な内実は、そのときどきによって異なっていたことでしょう。

(ワタシの場合だと、思春期に入って相応に充実した青春模様の一方で、対人関係進路のことで悩んだり、やがて社会人になって仕事恋愛を模索しつつも、どうしようもなく行き詰まったり、そしてソコにはじつは性同一性障害が絡んでおり、ついには社会的に性別を女性に変更して生きることに踏み出し、現在に至る………というプロセスが充当します。詳しくは一連の拙著にて(^^))

そうして、私たちは、そんな毎年毎年を、ときに浮かれつつ、そしてときに歯を食いしばって耐え、場合によってはもう生きるのがイヤに思えたりしながらも、それでも懸命に前を向いて、ここまで歩いてきたのではないでしょうか。

つまり、スーパー戦隊シリーズが放映されてきたこの三十有余年というのは、視聴者が必死に生きて抜いてきた時間軸を象徴的に表しているのです。
戦隊シリーズ各作品が、折々において、名作と絶賛されたり、特に注目されなかったり、いちじるしく不評であったりしながらも、延々と継続してきたこととも、まさしく照応するかもしれません。

その果てに今がある。
がんばって前へ進んできた末に、この2011年が繋がり、だからこそそこでこうして『海賊戦隊ゴーカイジャー』を見ることができているのです。

そうして、そんな実績は、また来年以降も続く日々を乗り切っていくための大いなる力となってくれるにちがいありません。


かかる具合に、日々のがんばりを自ら受け継いで、年年歳歳、自分なりに前を向いて、可能な限りの一生懸命を生きていけば、それが10年なら10年分、30年なら30年分、自分の人生の資産として貯蓄される――。
そんなふうにそれなりに生きてきた経験が、次なるステージををがんばっていく自分にとってのリソースとなり、あるいは、それこそが、かけがえのない「わたし」の人生そのもの――。

そしてそのとき、人は呼ぶのです。
これをこそ「自分だけの宝物と。


……これが『海賊戦隊ゴーカイジャー』が言外に訴えている、視聴者への最重要メッセージなのではないかなと、私は思うのです。

  


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Zephyranthes

  はじめまして。「宇宙一のお宝」で検索してここに迷い込みました仮面の男です。
 結果ではなく過程が大事だということはボウケンジャー編で明石チーフが言っていました。
 井上敏樹はメイン脚本の荒川氏に「宇宙最大のお宝が『地球人と仲良くなりました』とかだったら、俺はお前を軽蔑するからな」と釘を刺したそうですので、そういう線はなさそうです。
by Zephyranthes (2011-09-14 22:54) 

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