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「LGBT」など性的少数者の人権、セクシュアリティの多様性、クィア論、男女共同参画などや、そうした観点に引きつけてのコミュニケーション論、メディア論、「アニメとジェンダー」など、ご要望に合わせて対応いたします。※これまでの実績などはお知らせブログにて

性別を変えるためのモノが、そんなところで売られてた!? [多様なセクシュアリティ]

トランスジェンダーが幼いころ、とみにFtMの人にあって、「デパートでオチンチンを買ってきて!」と親に要求するようなことは、性同一性障害をめぐる当事者の不満足や周囲との軋轢――の詳細は拙著『性同一性障害の社会学』などにもまとめてありますが――を表す一挿話として、しばしば語られるエピソードではないでしょうか。

むろん、そんなモノが百貨店でフツーに取り扱われているはずはなく、実際に買ってきてもらえた人はいないでしょう。


しかし!
世の中は広い。
しかるべきところには、しかるべきものが売られていたりするのです。


先日、私が某家電量販店でパソコンの周辺機器を探していたときのこと。
接続ケーブル類の売り場で、ふと棚の一角に目をやったとき、驚くべき商品名が目に飛び込んできました。

その名は!!


ジェンダー チェンジャー !


(゜レ゜!)/

「な、な、なんですとぉっ!?」

まさかソレを使えば簡単に性別が変えられるとか!?
いゃ単に『トランス戦隊 ジェンダーファイブ』の変身アイテムみたいな?
いずれにせよ、なぜそんなものがこんなパソコンパーツ売り場にっ!!


……0.3秒ほど、そういう妄想が頭を駆け巡ったのち、私は真相を悟りました。

そう、よく見ると、アレでした。
簡単に言うと、線をつなぐ際の「変換アダプター」。

つまり、ケーブル終端の接続コネクター部分の形状が、凸どうしだったり、凹どうしだったりすると、つなぐことができないので、そのような場合において、一方を凸から凹へ、あるいは凹から凸へと変えるために取り付ける補助器具だったのです。

コレを、人呼んで【 ジェンダーチェンジャー 】と形容していたわけですネ。


なぁ~んだ。
人騒がせな(^^ゞ


とはいえ、迂闊にも、知りませんでした。
このときまで。
この種の器具を そんなふうに呼ぶとは。

いちおう電気製品の接続は得意なほうだし、高校のときの放送部でもそれなりの仕様の音響機器の接続など手がけていたんですけどねぇ…。
ワタシ的には今まで「変換アダプター」としか表現してなかったです。


しかも、帰ってあらためてネットを検索してみると、これは特定のメーカーだけの商標名なのではなくて、かなり普遍的な言い回しになっているようです。

あまつさえ、日本国内だけではなく、英語圏でも同様に「gender changer」と呼ばれているとか。
いゃ、むしろ英語圏での表現のほうがルーツなのでしょうか。


なお、ここまで読んでイマイチ話が見えないという人のために、念のためしつこく解説すると、このような電気製品の配線をおこなうような人々の間では、一般にケーブルの端っこのコネクター部が凸のものを「オス」、凹のものは「メス」と言い表しているんですねぇ(*^_^*)。

でもって、これまた日本語圏のみならず、英語圏でもやっぱり「male」「female」というんだそうです。

そんなわけで、
凸「オス」→ 凹「メス」
凹「メス」→ 凸「オス」
という具合に“性別”をチェンジする器具だから「ジェンダー チェンジャー」だ
――ということなんですナ


えっ、でも、社会学的には「ジェンダー」は社会的・文化的な性別(というのが教科書的に説明した基本的な意味)のことであって、この場合「セックス」の語が生物学的な性別の意味で対峙するのだから、その観点からは、これらの変換アダプターは「セックス チェンジャー」と呼ぶべきでは!?

たしかに、そういう指摘もありえます。

ただ、実際のところ、例えば生物学の分野内――なので生物学的な話をしているに決まってる――などでは、生殖行動のことが「セックス」なのに対して、「ジェンダー」を性別の意味で使う用法も一般的だったりするそうなので、そう考えるとあながちまちがいとも言えないみたいです。

いゃいゃ、それよりも、何よりも、単にパソコンのパーツを探しに来たケー○デ○キの店頭の商品名がいきなり「セックス…」だと、顧客がドン引きする!?(^o^;)

てゆか、有害フィルターが過剰反応したらオンラインショップで検索できないという厄介な実害も!?


というわけで、思わぬところで「ジェンダー」の語に出くわしたお話でした。


ついでに、拙著『女子高生になれなかった少年』において、メールマガジン連載時にはあったのに、書籍化の際に分量の都合で削られた箇所を大公開!(^o^)丿
  ↓  ↓  ↓
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

文化祭前日は生徒会の手伝いや放送部の仕事で、
これまた大忙しだった。
視聴覚室の前をたまたま通りかかると、
生徒会の後輩の田近菜奈と柴山杏子がおろおろしていて、
私の姿を認めるや否やすがるように訴えてきた。
「小川先輩! ここの配線わかります?」
「森川くんが
 中庭のステージのほうに手間どっていて来れないんです」
視聴覚室は8ミリ映画の上映会場。
その音声の配線の接続は放送部は管轄せず、
文化祭実行委員のほうですることになっていた。
困っている後輩に頼られて、見捨てていくわけにはいかない。
私は快く作業を請け負った。
「ありがとうございました!」
「本当にスミマセン」
菜奈と杏子から感謝され、尊敬され、好感度がアップして、
私は上機嫌だった。
こうした電気系での活躍は、
私が女の子たちの間で男としての株を上げる貴重なカードであった。
「マッくん、遅いやんかー!」
急いで体育館に移動すると、
瓜野幸子がややおかんむりだったがしかたがない。
演劇やコーラスがおこなわれる体育館のステージの音響のほうは、
放送部が全面的に面倒を見ることになっている。
当日も交代でミキサーの前に詰めなくてはならない。
私たちは協力して用意を始めた。
ステージがよく見える位置にミキサーを設営し、
方々とケーブルをつながなくてはならない。
そう、ここでも私は電気系の配線で活躍することになるのであった。
「モモちゃん、エンコー!!」
私は春風桃子に向かって叫んだ。
「援助交際」なんて言葉のなかった当時、
放送部員は延長コードのことを臆面もなくそう呼んでいた。
「先輩、コレでいいですか?」
桃子の持ってきたケーブルの太さは合っていたので、
私はそれを受け取ると手元のケーブルの端と合わせてみた。
「………………………。
 アカンやん、コレ。メス-メスじゃつながれへん。
 こっちの端っこがオスのやつないかな!?」
ケーブルの端のコネクターの形状が、凹か凸かを言っているのだが、
こうして見ると、なぜか
放送部の会話はまじめな活動のときほどきわどい。
かくして文化祭前夜があわただしく過ぎると、
文化祭本番の二日間も、あっと言う間だった。
体育館のミキサーの当番を桃子と二人でするひとときもあり、
私の桃子への想いは、この文化祭とともに大きくもりあがった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ちなみにが書籍化の際に省かれたのは、あくまでも分量の都合であって、同様にメルマガ連載時の内容が書籍化で削られているのでも、その理由が「マジちょっとヤバいから」(!?)な『M教師学園』とは事情がちがいます(^^ゞ

   


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