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検索される【スイートプリキュア つまらない】 [メディア・家族・教育等とジェンダー]

ブログのアクセス解析を見てみると、秋口から年明けの今頃にかけて、昨年度は日曜日になるたびに【 キュアサンシャイン 性別 】の検索ワードが増えた話は昨年度のうちにしましたが、ソレに相当する事象が今年度は【 スイートプリキュア つまらない 】なのは、はてさてどうしたものでしょうか。

件の番組はといえば、過去シリーズでは例年この1月は最終決戦編で物語もクライマックスとして大いに盛り上がるタイミングなのですが、やはりここまでの積み重ねというものができてないがゆえに、今ひとつピンとこない内容になっていると言わざるを得ません。

ツイッターなどで交わされている辛口感想の類を見れば、もはや次回作『スマイルプリキュア』に期待する声の陰で『スイートプリキュア』は消化試合化している気配も濃厚です。


スイートプリキュアがつまらない理由については、前回まとめたとおりなのですが、
 ◇キャラが立ってない(人物像に深みがなく感情移入できない)
 ◇世界設定の底が浅い(物語世界が平板で魅力に乏しい)

…の2点については、これは本来番組がスタートする前の最初の時点でキチンと設計して、必要な設定を整えておくべきものですから、まぁ後からどうこうできるものではありません。

一方
 ◇ストーリー展開が不自然(登場人物の言動に違和感)
…な件については途中からでも修正は不可能ではないはずなのですが、『スイート』では中盤から脚本の方針などが路線変更されたりもしたものの、結果としてはかえってストーリー展開の支離滅裂さに拍車がかかったのが否めません。


そしてなにより、最大の問題点である、何が幸福で、何が不幸なのか!? がいっさい語られていない件については、いまだに何の回答も示されていません。

毎回くり返された、街が敵の攻撃に遭った際「不幸のメロディ」を聞かされたら人々がいきなり悲しくなるという描写もあまりにも薄っぺらです。
例えば「不幸のメロディ」を引き金として、その人が抱えてる何らかの悲しみ要素が刺激され、それゆえに悲しくなるというプロセスを丁寧に描けばもっと深い人間描写になるとは、はたして番組制作スタッフは誰一人として気付かなかったのでしょうか?
(思えば『ハートキャッチプリキュア』は、そこのところの描写が非常に充実していた)

そんな状態で「しあわせのメロディ」云々と言われても、それでもたらされる幸せというのもしょせん表面的なものでしかないのではと、期待感が上がらないのは無理もないことです。
子ども番組として、視聴者である子どもたちに伝えるべき「シアワセとはこういうことなんだヨ」というメッセージが何ら描けていないこの『スイートプリキュア』は、まさに「中身がない」のです。

あと、付け加えるなら、音楽がモチーフとされたことも、まったく生かされていません。
本来なら当初そう企図されていたはずの、物語を通じて「あぁ音楽って本当に素晴らしいものなんだナ」と視聴者が実感できるような展開は全くなかったです。
せめて何か音楽にまつわる造詣が深められるような小ネタすら、印象に残るものは皆無です。
だいいち主人公たちと音楽の関わりからして、まったく描けていないのです。音楽を触媒として作品世界に感情移入するなど、できようはずもありません。
実態は、ただただ戦いの小道具として音楽が都合よく使われているだけ。
もしかして、最も音楽を冒涜しているのは、この『スイートプリキュア』の制作スタッフなのではないでしょうか!?

もはや伝統あるブランドに成長したプリキュアシリーズに、こんなにも一本スジの通ったテーマがない作品がラインナップされたことは汚点以外の何者でもないし、メイン視聴者として想定されている小さな女の子にとっても、自分たちにふさわしいと推奨されるアニメがかようなていたらくなのは悲しい出来事だったのではないでしょうか。


プリキュアシリーズが、「女の子たちだけで自ら戦い、自分たちの夢を守りシアワセを勝ち取る」という基本フォーマットを確立し、従前指摘されていた「子ども番組の戦いの中では女性は添え物」「女性メインのようなジャンルでも多くは恋愛ボケ」には当てはまらないスタイルの子ども番組を開拓してきたという点は、大いに評価されるべきところです。

そんな意義深いプリキュアシリーズなのですから、制作サイドはもっと自覚を持って、その物語の質的な充実・向上に努めなければなりません。


次回作『スマイルプリキュア』は、すでにオンエアされている予告映像を見る限りでは、なかなかイイ感じに仕上がっているように見受けられますが、しかしながら、何がバッドエンドでどういうハッピーエンドがハッピーなのかについてキチンと掘り下げて描かないのなら、スイートプリキュアの轍を踏むことになるので、そうはならないよう期待したいです。

 

★★★★★★★★★★

というわけで、ここで欲求不満解消の総決算として、従前より提案していた、あの『けいおん!』のメンバーにそのまま変身してもらう……というパロディを大公開!
あくまでもパロディ作品です。元作品への敬愛を忘れずにお楽しみください。

真『スイートプリキュア』
第1話「ババーン!けいおんプリキュア誕生ニャ」

「えっ 軽音楽部に?」
放課後、音楽準備室を訪ねてきた1年生4人を見て黒川さわ子は軽く驚いた。
3年生が卒業して部員がゼロとなっていた軽音楽部は、誰も新入生が来なければ自然消滅して廃部となる状況で、そんなところへわざわざ入部希望者がまとまって来るとは思っていなかったのだ。
「ワタシ、澪ちゃんとバンドを組むのが夢だったんです」
そう訴えるのは南野律。ショートカットの髪にカチューシャがトレードマークの、いわゆるオテンバ娘タイプだ。
律の発言中で「澪ちゃん」と言われたのは傍らにいる西島澪。クールで知的な印象の彼女は黙って頷いている。
「アタシも軽音部に入りたいなぁって思ってたら、ちょうど澪ちゃんや律ちゃんと出くわして……」
そう明るく言い放つのは北条唯。ややマイペース気味の天然系をにじませている。
「ねっ、ムギちゃんも同じだよね」
唯がそう続けると、となりの東山紬がゆっくり口を開く。
「そうなんです。なんか3人を見てて楽しそうだなぁ~って思って……」
その上品な笑顔とおっとりとした口調からもわかるように、紬からはそこはかとなくお嬢様オーラが立ちのぼっている。
「……んー、わかったわ。じゃ4人とも入部ね」
軽音楽部がなくなれば、顧問の仕事も吹奏楽部の方に専念できるとも思っていたさわ子だが、こうなってはしょうがない。
(…………それにこの子たちなら、もしかして)
さわ子は一瞬考えたが、じきに決断した。
「そうそう、軽音部に入ったんなら、紹介しておかなきゃね。……ハミング、おいで」
さわ子に呼ばれたかのごとく、おもむろに机の下からぬいぐるみのような奇妙な白ネコが姿を現した。
「はじめまして、『ハミング』ニャ、軽音楽部の守り神みたいなもんニャ」
4人の反応は二分された。
「ね、ネコさんが……」
「し、しゃべった……!」
驚いて退いたのは澪と紬。対照的に律と唯は一歩前へ出た。
「スゴーイ!!」
「かわいいーっ!」
いきなり律に抱え上げられ、唯に抱きしめられたハミングは、戸惑いながら続ける。
「よ、よろしくニャ。あと『スキャット』って名前の、黒い子も居るからニャ」
そのときだった。
音楽準備室に何か黒い影のようなものが下りた。
 ~~~~~
  中略
 ~~~~~
「この世界にも音楽などは要らぬ。すべての音楽は俺様が消し去ってくれるわい」
異形のモンスターがそう呟くと、黒いエネルギー体はさらに渦を巻いた。
「そんなことは許さないニャ」
「あなたたちの思い通りにはさせないワっ」
ハミングとスキャットは必死に結界を張って抗っているが苦しそうだ。
「……なんだかわかんないけど、ムカつく」
戸惑いつつその様子を見ながら、最初に口火を切ったのは唯だった。
「ホント、せっかく軽音部でバンドが組めると思ってたのに」
そう律が後を受けると、澪と紬も続いた。
「うん、アイツ、なんか気にくわない」
「いかにも悪者って感じですよねー、いけませんワ」
そんな4人の気持ちの高ぶりを背後に、スキャットは何かを感じ取った。
「あの子たち、やっぱり……。ねぇ! ハミング!?」
「まちがいないニャ、この気配は…………」
結界が破られそうになりながら、ハミングがそう応えた瞬間だった。
何かが強い光を放った。
4人の胸の奥から、眩いエネルギー体が湧き出し、そして各々の身体を包み込む。
「こ、これがこの世界の伝説の………」
「プ、プリキュア……ニャ!?」」
光るエネルギーの束は音楽準備室の片側に充満し、そしてはじけた。
その中から姿を現したのは――。
「掻き鳴らせ 希望のギター! キュアメロディ!!」
「叩き込め 情熱のドラム! キュアリズム!!」
「響かせよ 平和のベース! キュアビート!!」
「溢れ出よ 癒しのキーボード! キュアハーモニー!!」
 ~~~~~
  後略

シリーズ2期『スイートプリキュア♪ライブ!!』
第2話「アーアー!けいおんプリキュアに新メンバー入部ニャ」

  前略
 ~~~~~
「…ごめんね、あずにゃん、私たちってプリキュアもしてるんだ」
敵の攻撃をかわしながら、唯が梓に語りかける。
「音楽を世界から奪い去ろうとしている悪い奴と戦ってるの」
同様に、律が説明を補足した。
澪と紬も普段とはうってかわった敏捷さで敵を翻弄している。
梓はおろおろしながらその様子を見守っていたが、先輩たちの真摯な姿勢に、しだいに心が熱くなった。
敵のモンスターは一見劣勢に見えたが、なんとか持ちこたえ、やがて伺っていた機会を捉えた。
会心の一撃が放たれ、4人のプリキュアは吹き飛ばされた。
「あぁっ」
梓は気が気ではなかった。
先輩たちが――、大好きな軽音楽部の先輩たちが、大変なことになっている。
なんとか、なんとかしなければ……。
「て、天道さん」
「に…逃げて」
苦しそうに言う紬と澪の声に、しかし逆に梓の決意は固くなった。
(自分も…戦いたい、先輩たちといっしょに!)
その思念を待っていたかのように梓の胸の奥から眩く煌めくエネルギーの塊が湧き出してきた。
「あ…、あれは」
「まさか、あずにゃんが!?」
光の束がはじけたとき姿を現したのは、メロディ、リズム、ビート、ハーモニー、そのいずれでもないが、しかしまぎれもなく伝説の戦士プリキュアの姿だった。
「心つながれ 共感のボーカル! キュアシャンテ!!」
 ~~~~~
  後略


 


 
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