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「LGBT」など性的少数者の人権、セクシュアリティの多様性、クィア論、男女共同参画などや、そうした観点に引きつけてのコミュニケーション論、メディア論、「アニメとジェンダー」など、ご要望に合わせて対応いたします。※これまでの実績などはお知らせブログにて

唐津聖地巡礼余話:男女二分社会の闇はまだまだ深い!? [メディア・家族・教育等とジェンダー]

お知らせブログの記事にまとめてあるとおり、今年度の「夏の旅行(母娘男旅)」は3月に実施済みです。


行き先に含まれる唐津は、引き続きアニメ『ユーリ!!! on ICE』の聖地巡礼で賑わっているところなのではないでしょうか。

で、今般の旅行に関連して、お知らせブログの記事では語りきれなかったことを、後日ツイッターにて3点ほど補遺しましたので、その内容をあらためてここにまとめておこうと思います
(いちおう「ツイログ」もあります)


まずは「巡礼者の男女比モンダイ」。

 


[ ある種のクィアセクシュアリティにもつながる内容のコンテンツなのに、その主要なファン層が一定の指標によって「男女」に分かたれてしまうというのは、そうした分断に該当せずにさまざまなコンテンツを楽しめる立場からすると非常に奇異に映るし、その前にもったいないという気が多分にしないではない ]

……せっかく作品で描かれている内容は男女という指標を越えて登場人物らが深い関係性を紡ぐことが多くなってきているのに、イケメンが登場する作品は女性向け、美少女がたくさん出てくるのは男性向け……という硬直した分断がいつまでもなくならないのは、いいかげんどうにかならないものかなぁと思います。


次に大刀洗での戦争について馳せた思い。

 


[ 1機だけ撃墜に成功したというB29の乗組員たちは、いわば敵だし、そのときの空襲では小さい子どもまで死傷してるものの、今となっては等しく戦争の犠牲者。そう思って遺影を見ればみんな気の良さそうな好青年。戦争という状況でなければ、当時の大刀洗の人々と友好的に出会うこともできたろうに ]

[ そのB29乗組員らの遺族の立場になれば、当時は米軍の優勢も決していた時期、ニッポンの片田舎までちょっと爆弾を積んで飛んでいくだけの簡単なお仕事だったはずなのに、なんでウチの子たちだけ帰ってこないの!? …ってなるわけだし ]

[ で、空気が重くなりすぎたので
「……まさかこの乗組員たちの中に、今度のミッションが終わったら除隊して故郷に帰って結婚する予定やった人とかおったんかなぁ」
「あ゛~」
とオチをつけて場を和ませることに; ]

……端的に言って、戦争による悲劇を市民に味わわせないようにすることが国家のお仕事ですね。


最後に「九州は学校ジェンダー問題の暗黒大陸なのか!?」案件。
(スミマセン; ↑煽りすぎというか↑ちょっと釣り小見出しですネ↑)

 


[ (「個人情報」よりも「地元の若者達の晴れ姿をみんなで共有する」ことのほうが優先されるというカルチャーにも初見では戸惑いましたが) ]

[ で、しばらくそのまま見てたらどうもオカシイ。卒業生として名前を呼ばれ返事をして起立していくのが男子ばかり。
「あれ、男子校? 公立ちゃうん?」
「もしかしたら工業系の高校か何かかも…」
と親子で訝っていたものの、少しすると今度は女子ばかりが呼ばれるように。
「ここは女子クラス?」 ]

[ しかし、ソレらが何セットか反復されると、さすがに私たちも気が付きました。
「こ、コレは、まさかの…」
「あの伝説のっ!?」
「男子が先・女子が後の《男女別名簿》!」
「……は、初めて見た;」
「ま、まだこんなところで生き残ってたのか~」 ]

[ というわけで、小中高と男女混合名簿に慣れ親しみソレが当たり前になってる満咲と、それに保護者として接してきたワタシとしては、あらためて軽くカルチャーショックでした; ]

[ とはいえ、そう思って画面を見直すと、卒業生たちの風貌などから察するに日頃の服装指導などでも男女別に別個の基準があって、以て全般的に男は男らしく・女は女らしく的な風潮も醸成されていたのではないか? と; ]

[ 「……なんかセクマイには過ごしづらそうな環境やなぁ;」
「地元では歴史ある伝統校っぽいけど、その観点からだとシビアやな、やっぱり」
「相談できる先生とかおったらエェけど、そうでなかったらキツいで」
「ぐぬぬ……」
……とまぁそんなことを親子で話し合うことになった九州の夜なのでした ]

あらゆるジェンダー問題は、人を単純に「男女」に二分し、そのことに疑問を抱くことなく両カテゴリの構成員に対して各々異なる取り扱いを反復することによって、つねにすでに強化再生産されるわけです。
学校という公教育の場が、むやみにソレに加担することのないように、今一度、不必要に男女を区別した取り扱いは見直していくことが望まれるところでしょう。
それが性的少数者のみならず、すべての児童生徒が生き生きと過ごしやすい学校運営につながるはずです
(今回はたまたま、男女二分的なジェンダー意識が強いというステレオタイプがある九州での事案でしたが、むろんこれは地域を問わず意識的に取り組まれるべきことです)。


 


ということで、そもそも「男女」という区分は、なぜそれほどまでに重要なものとして必要とされているのか。
その背後にある「異性愛」規範もまた、どうしてそこまで執拗に執行されようとするのか。

そのあたりを意識的に疑い続ける習慣は、ぜひ持ちたいところです。


◇◇


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オーバーロード

 学校のジェンダー問題に関してはいろいろと考えるべきことがありますね。教育機関は人間を男女に割り振って、かつ、性役割を有形無形、公式・非公式に押し付けてしまう機能を果たしがちですから。

 思えば、中学生以上では家庭科は女子のみという差別的カリキュラム基づく教育が公式に行われていたのはたったの四半世紀前でした。私はその最後の世代だったので、小学校では男子も女子も家庭科をやっていたのに、中学生になったらどうして性別で授業が違うのか、男女平等ではないのかと不思議に思ったことがあります。よくもまあこんな制度が90年代に至っても残っていたものだとあきれてしまいますね(多くの批判はあったのに、社会からなかなか真摯に取り上げられなかった)。

 また、一見選択の自由があるように見えて実はないというパターンも少なからずあります。一例がかつての体育。球技、武道(柔道か剣道)、ダンスの中から二つ選べというものでしたが、球技は共通で、男子が武道、女子がダンスを選ぶのが常態化していました。男子がダンス、女子が武道を選ぶことはほぼ不可能であり、選択制といっても名ばかりのもので、ジェンダーイメージの露骨な強化になっていました。
 なお、今は全て必修なのでその問題は一応解決ということになりましたが、そもそも武道など必修でやらせるべきなのかと言う別の問題が放置されてしまいました(正直、要らないと思う。銃剣道など論外)。

 そして、思わぬ形でジェンダー問題が残っているものがあります。それはランドセル。周知のようにかつてはほぼ黒と赤の二色しかなく、男子は黒、女子は赤という性別イメージが固定化していたランドセルは、今では多種多様な色のものが存在します。いい時代になったものと思っていましたが、現実の小学生の様子を見るといささかに気になることがあります。
 女子のランドセルはカラフルでそれこそ黒からブルー、ピンクまで様々な色のものが使われているのですが、男子の方は相変わらず圧倒的多数が黒、たまに違う色があってもせいぜい紺か濃いブルーです(私の近所だけかもしれませんが)。女子が赤一色から解放されたのに、男子は黒一色からあまり解放されていません。これでは「男子は黒。女子は赤」から「男子は黒、女子はカラフル」になっただけで、男子も女子も自由に色を選べるという理想形とは程遠い状況と言えるでしょう。何でそうなってしまったのか?おそらく男の子の家族や親戚が「男は黒」というイメージから逃れられない例が多く、「黒以外では『女の子みたい』と言われいじめられる」と思っているのではないでしょうか。二重三重に問題のある発想ですが、深刻です。
 こういうイメージを払拭していくのはどうしたらいいか?一刀両断な解決策はなかなかないですが、小さい子どものキャラが出る作品(テレビ、本等々)で多様なランドセルを男の子も女の子も使っているシーンが増えていけば、少しずつ改善されると思います。もちろん、他の側面でもジェンダーバイアスを拡大しないようクリエイターたちは配慮していくべきでしょう。個人的には『サザエさん』と『ドラえもん』に率先して動いてほしいですね(実は一度だけ『サザエさん』で青のランドセルを使う一年生の男の子の姿を見たことがある)。この二つの作品の力はそれこそ深夜アニメが束になってかかっても敵わないほど強大ですから。

 さて、「男先女後」の男女別名簿がまだ残っていたとは驚きですが、保守勢力によって強力に推し進められたバックラッシュの波を考えると不思議ではないのかもしれません。面白いことに保守勢力は男女別名簿ならなんでもいいと思っているわけではなく、「男先女後」であることを当然の前提にしています。男女別なら「女先男後」でもよいはずだが、彼らは絶対にそれを拒否します。ここに彼らの本性が見えてきますね。

 
by オーバーロード (2017-05-02 22:01) 

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