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佐倉満咲、修学旅行に行く [今週の佐倉満咲]

前記事のとおり我が娘・満咲の小学校の卒業式も済んでしまったので、ものすごく「今さら」なんですが(後で書こうと思ってるうちに延び延びになってしまったネタというやつで)、昨秋には修学旅行にも行ってきていたわけです。

行き先は広島。
いわゆる、平和公園で原爆資料館を見学 → 宮島で世界遺産・厳島神社に参拝 …というようなパターンだと考えてもらってイイです。


で、宿泊をともなう大きな学校行事ということで、学校サイドもいろいろと気を遣ってか、保護者向けの案内プリントなども多数ありました。

そしてその中には女子の生理についてのものもありました。
やはり小学校の修学旅行においては、もっともデリケートな重大問題ということなのかもしれません。

ところが、その一方で、男子のそのあたりの問題はまったくスルーされていました。
素直に考えれば修学旅行の夜の就寝中に夢でイッちゃう男の子だっていないはずはないのですから、このあたりも配慮すべきデリケートな課題ではないのでしょうか。

こういうところにも世の中のジェンダー非対称性が垣間見えますねぇ、やっぱり。

ただ、子どもたちが自ら編纂した「修学旅行のしおり」の「持ち物」の項目において、いろいろ持っていくべき品物が挙げてある中に生理用品もリストアップされていたのですが、その書き方というのが【生理用品(いる人)

こういう場合の注釈にはついつい「女子」と書いてしまわれがちな中で、かようなシンプルイズベストな言い回しを選択する我が娘の同級生たちというのも、なかなか良いセンスをしていると思いました。


◎女の子の初潮の際に赤飯を炊いてお祝いする習慣というのは、むしろ恥ずかしくて自分はイヤだったというような感想も散見されますし、実際には現代ではどのくらい実行されているかにも疑問符がつきます。
それでも、そうした祝福の対象である象徴としてのセレモニーが知識として認知されているのは間違いないです。
それに比して男の子の精通というのは、まったく無視されています。
こっそりと始末する――映画などで女の子が初潮をそのように処理することが家庭環境に恵まれない描写としてしばしば用いられるように――ことがデフォルトとなっているのではないでしょうか。
当然、このことが男の子の性というものを不可視化し地下化し、ひとりひとりにとっても社会全体にとっても性をめぐる不幸な状況を紡いでいってしまうことは想像に難くないでしょう。
その意味で、男の子の精通に関しても、何かこうもっと意識的に祝福する風潮を育んでいくべきだし、男性学の分野から、これらのことがもっと主張されてもよいのではないでしょうか。
少なくとも女の子の初潮での赤飯に対抗(!?)して、何かお祝いのカタチはほしいところですね。
…………あっ、栗ご飯はどう!?(*^_^*)


ともあれ、満咲は修学旅行が楽しみだったようで、準備期間中は、すこぶるノリノリで上機嫌でした。

そのあたり、性別違和が根底にあったために学校生活がじゅうぶんには楽しめず、ともすればストレスフルな事柄が数多くあった「お父さん」と比べると、「親に似てない」ポイントですね。

ことに修学旅行のような宿泊行事は、私のような当時は自分の性別違和をさほど自覚的に言語化できていなかったパターンならまだしも、昨今のネットで情報を仕入れたりして性同一性障害をハッキリ自覚している――ことは将来へ向けて戦略などを組み立てていくうえでも必ずしも悪いことではないですが――ような当事者にとっては、具体的に大きな悩みの種でもあります。

それゆえ昨今の学校では、当事者生徒の訴えに応じて個室を配慮するなどの方策をとるケースも少なくないようですが、反面せっかくの修学旅行の夜、友だちと一緒に過ごせないのは寂しいというのも真理でしょう。

実際には、例えばすでに日頃から女子と懇意にしているMtFの場合、そんな女友達らから「○○ちゃんはもうウチらの仲間やから、エエやん、こっちの部屋へおいでよ」…というふうになったりもしがちだとは聞きますが、それはそれで周りの女子生徒の保護者などからは憂慮の声が上がる気持ちも、私も戸籍上は「娘を持つ父親」の立場ですからわからないではありません。

もっとも、そういうケースが娘の学校でもしも本当にあったなら、そもそも「エエやん、こっちの部屋へおいでよ」と言い出す張本人というのが満咲の役回りになりそうですけどね(^^)。


さておき、そんなふうに満咲が修学旅行を楽しみにしつつ準備を進めていた昨年、雑談の中で、彼女がクラスの修学旅行の係の分担において「宿泊の部屋割りを考える係」もしていることが判明しました。

たしかに、いわゆる女子のグループ化のような人間関係構造と距離が置けていて、誰かれ問わずみんなでみんなと仲良くできるといいという理想を実践しているミサキちゃん――という意味では、なるほど、甚だ適任だと言えるでしょう。
しかし………………。

一瞬考えた後、私は念のため次のように釘を刺しました。

「あの~、女の子と男の子は別々の部屋にせなアカンで」

私・佐倉智美としては、かように性別二元制と異性愛主義に与した側に立った物言いをするのには忸怩たる思いが禁じえませんが、ここはやむを得ません。
しかし満咲の回答はアッサリしていました。

わかってるよ、そんなん(もぉいちいちウルサイんやから!)

さしもの満咲といえども、少なくとも宿泊の部屋割りを平然と男女混成でおこなってはしまわない程度には、世間一般とジェンダー観念がズレているわけではないようです。

でまぁそうした流れでしばらく会話は続いたのですが、やはりこれは、満咲のところには実際にはいないとしても、性同一性障害のクラスメートがいたりしたら、悩ましいシチュエーションの代表例。ためしに我が娘がもしもそういうケースにはどう対応するつもりなのか確認してみました。

すると満咲いわく「本人にどっちにするか確認してみる」とのこと。

「……………それで本人に聞いてみて、本人がこっち(MtFなら女の子部屋)がイイって言ったらどうすんの?

そのとおりにするがナ。そうでなかったら聞く意味ないヤろ!?」

……ぃや、ハイ、アンタが正しいです(^^ゞ
さらに…

「わかったわかった。それはそーと、そういう(性同一性障害などの)子はミサキのクラスには実際にはおらへんねんなぁ?」

「そやなぁ、おらんとは思ってるけど、でもじつはそうやったとしても、隠してるかもしれへんしナ」


…………だめだコイツ。
あまりにも事情通すぎる!(^o^;)


というわけで、やっぱりアレですね。

「もはや貴様に教えることは何もない
 今すぐ広島へ行け!」

チャンチャン♪

この件のツイッターでの速報は
http://twitter.com/tomorine3908tw/status/99855629044301824
 ↓↑こちら↓↑など
http://twitter.com/tomorine3908tw/status/99856997356285952

 

実際に学校現場で性同一性障害を訴える児童生徒がいるような場合には、こうした修学旅行の部屋割りをはじめ、日頃のトイレ、更衣室など、社会がキッチリとした男女分けを要求する事物ほど、男女に単純に分けられないセクシュアルマイノリティの実状との摩擦が起きてしまうのだという認識を前提に、本人とよく話し合い、その希望を最大限尊重しつつ、妥協点をすりあわせながら、現実的な落としどころへ解決方法を導くことが肝要です。


 


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