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久しぶりの公的科学戦隊であるゴーバスターズにはがんばってほしい [メディア・家族・教育等とジェンダー]

日曜朝の戦隊シリーズ、話題になった『海賊戦隊ゴーカイジャー』の後を受けた「36番目のスーパー戦隊」として、この2012年度に始まったのが『特命戦隊ゴーバスターズ』です。

脚本には『侍戦隊シンケンジャー』でも筆を揮った小林靖子を迎え、今までにないテイストも意識して作り込まれた意欲作と言えます。

地下の秘密基地から発進する巨大メカはかっこよく描かれ、CGを併用したロボットのアクションも見応えのある映像に仕上がっています。

戦隊が属する組織のスケール感も、司令官やサポートメンバー、メカの整備担当などのさまざまな人員が登場することで、明示的に描かれているといえるでしょう。


で、それらを見ても、ひとつ言えるのは、作品世界の立脚点「科学か魔法か」および「公か私か」について、旧来においては男の子向け番組はそれぞれ前者寄りであり、後者は女の子向け番組の専売特許のごとき状況だったのが、近年はその構造がうやむやになり、後者立脚のスーパー戦隊も珍しくなかったところが、今般さらに1周まわって、公的な科学戦隊の方向にいちじるしく回帰したことです。

【参考】→「戦隊ヒーローの科学離れ

上記リンク先記事でも触れていますが「はやぶさ」の帰還がひとつの科学回帰の契機とはなったかもしれません。
『仮面ライダーフォーゼ』も宇宙を扱っていますし、他局では『宇宙兄弟』もアニメ化され、(土曜深夜名目の『モーレツ宇宙海賊』を翌早朝と解釈し、星座がモチーフの『聖闘士星矢Ω』まで入れると)日曜の朝はまさに宇宙だらけになっていたりもします。


2000年台には『魔法戦隊マジレンジャー』を筆頭に、その超常的パワーの源泉がファンタジー系である戦隊が主流になっていましたし、公的機関所属の戦隊も『特捜戦隊デカレンジャー』より前は1990年台まで遡ることになり、『ゴーバスターズ』のような味方組織というのは2006年度の『轟轟戦隊ボウケンジャー』以来となります。

純然たる現代科学による(よりもちょっとだけ進んだ)テクノロジーのみで戦う公的機関所属の戦隊となると、――しかもメンバーがその機関専属となると、はたしていつ以来となるのでしょうか?
※メンバーが高校生でもあった『電磁戦隊メガレンジャー』を外すと、1997年からさらに遡行が必要になってしまう


それゆえ、そんな昔なら(つまり例えば『秘密戦隊ゴレンジャー』とかでは)当たり前だったはずの設定が、逆に新鮮な雰囲気に感じられる『特命戦隊ゴーバスターズ』。

「科学か魔法か」や「公か私か」が、単純に男の子か女の子かで分断され、両者が相容れない存在となってしまう状況は、むろん好ましくなかったのですが、かといって全部の作品が「魔法」で「私」ばかりになってしまってもつまらないです。

ぜひここはひとつ久々の「公的科学戦隊」としてがんばってほしいところですね。


   


◎ ………なのですが、イマイチこの『特命戦隊ゴーバスターズ』、視聴継続のモチベーションが上がらないのはワタシだけなのでしょうか?
理屈の上では面白いポイントが多数ある意欲作のはずなのですが、なぜか物足りない、見ていて燃えない。
つまるところ、ヒーローとしての熱さがない、伝わってこないんですねぇ。
あとひと工夫、来週もまた見たい・早く見たいと視聴者に思わせる「何か」が付加されれば、絶対にもっと盛り上がるはずなんですがが…。


◎そして (2012/06/28) ソバスチンさんからのコメントでの情報(ありがとうございました)にもあるとおり、『フォーゼ』の次の仮面ライダーが、なんと『ウィザード』! つまり魔法使い
まぁ戦隊ではすでに7年前にズバリ『魔法戦隊マジレンジャー』という前例がありますし、仮面ライダーにおける近例でも『キバ』や『オーズ』はかなり魔法寄りのテイストでしたから、今さら「え゛っ、男の子向けヒーロー番組で魔法!?」みたいな驚きはないですが、とはいえ宇宙を扱い科学シフトだった『フォーゼ』から一気に魔法ライダーとは…。
いゃ、むしろ戦隊も『ゴーバスターズ』で科学回帰な中でのバランス感覚と言うべきなのかもしれませんね。
これで来年度のプリキュアが科学プラスで地下にある政府管轄の秘密基地に司令官がいたりしたらカンペキだw
しかし、こうなると男の子向け・女の子向けを科学か魔法かで仕切るのはもはや無理です。
境界が揺らいでいるどころではなくて、明らかに混沌としちゃってます。
……おまけに『仮面ライダー ウィザード』がベルトと併せて使う変身アイテムは[ 指輪 ]というのは、魔法モノとしては必然的ですが、ソレでバンダイが玩具展開するわけですよねぇ。
ということは、9月になったら、男の子が指輪を欲しがるという事態が、そこかしこに平然と現出するわけですナ(^^)v


 

 


3世代目キオ編でも引き続き女性キャラの扱いが酷い機動戦士ガンダムAGE [メディア・家族・教育等とジェンダー]

『機動戦士ガンダムAGE』における女性キャラの扱いは、3世代目主人公のキオ編に入っても、やはり酷いと言わざるを得ません。

医療の分野に自ら生きがいを見出したはずのユノアも、もはや次世代編の主人公を産む役回りから解放されているはずのウェンディも、補助・ケア労働要員としてしか(あるいはまったく)画面に登場しません

突如の大抜擢に戸惑うナトーラ艦長の成長物語さえ、軍を退役したのにいまだに煩く口を出してくる第1世代主人公フリットの老害パワーハラスメントの前に、気持よく開花することはありません。

だいたい同じ「宇宙艦船の新米キャプテン」なのに、加藤茉莉香@モーレツ宇宙海賊が必要な決断を時宜に応じて下していくことが持ち味となっているのに対して、ナトーラ・エイナスにそれができないのは、本人の資質というよりは、周囲にいる年長者の態度・接し方によるところが大きいのは誰の目にも明らかです。

それに、そもそも制作側がナトーラ艦長の成長物語をきちんと描く気があるのかという点も、はなはだ疑問です。

やっと真っ当にキャラ立ちしてる女性キャラ登場!と思ったら、いきなりシャナルアさん戦死しちゃうし……。


   

 §巷の噂ではアニメ本編のgdgdを小説版が絶妙に補完しているとのこと


そしてそんな制作側の、男女二分的で男性中心的な価値観が極まったなという描写が、去る33話にありました。

――戦闘で敵からの攻撃を受け揺れる母艦の中で、ゆえあって同乗しているユウ・タク・ルッカの幼児3人組(ファーストガンダムにおけるカツ・レツ・キッカみたいなものです)は怯えて震えています。

そうしてついに泣きだしてしまったタクに対して、3人の世話を担当しているウェンディは……

「泣かないの、男の子でしょ


……………………。

いゃいゃコレはダメでしょう!

念のため注釈するなら、ウェンディがそういうキャラなのではなく、脚本がそのように言わせている

しかも直後にハロに「オトコノコ、オトコノコ」とリピートさせているのも悪質です。


まぁ世の中が性別で仕切られている現実がある以上、ある程度は「男」「女」に依拠したセリフが登場するのは不可避です。

しかし、ここで「男の子」を持ち出す必要はないのです。

例えば『スマイルプリキュア』16話では、キュアマーチこと緑川なおチャンが転んで泣く弟を諭す際には、相手の属性ではなくきちんと個として接しており、それでちゃんと問題を解決させています。

だいたいにおいて、その場で「してはいけない」こと(あるいは「すべき」こと)があるとしたら、そのことに「男女」は関係ないのです。

しかもあの場面は、「(女の子のルッカだって泣いてないんだから)男の子のタクが泣くのはダメよ」的なニュアンスで言われています。

これはまさに、相手のありのままを否定し人格を傷つける、最も言ってはいけないパターンの「男の子でしょ」の典型ではありませんか!

このようにして少なからぬ男の子が自己肯定感を下げ、そして男の子全般が感情を押し殺しあった果てに暴力的で支配的な関係性へと傾斜していくのは、NPO法人「SEAN」の調査研究結果を読むまでもありません(←あっ…ぃや、読んでください(^^))。

もぅ思わずオンエアを見ながら、【 男の子は出生時に割り振られた性別に根拠した規範圧力によって、泣きたいときにも泣けないことを強いられてるんだっ! 】と叫びたくなったくらいです。


ともあれ、こうした部分に制作側の意識がはしなくも表れていると言えます。

このような描写を無神経におこなっていることに気づかず、性別規範で視聴者をディスパワーして平気なようでは、この先も期待が持てません。

まさに『機動戦士ガンダムAGE』こそが、本当の意味での「子どもに見せたくないアニメ」だという様相を呈してきました。


 


夏色キセキは逆転の発想の「女の子アニメ」 [メディア・家族・教育等とジェンダー]

7月も間近に迫り、この4~6月クールのテレビドラマやアニメも、軒並みクライマックスを迎えていたりするのではないでしょうか。

そんな中、今期の最大の掘り出し物はと言うと、やはりワタシ的には『夏色キセキ』ですね。

 →公式サイトhttp://www.natsuiro-kiseki.jp/index.html

 ↓ローソンのキャンペーンでゲットしたクリアファイル^^;

 BL120621-natsukise.jpg


伊豆半島の下田に住む(←という設定はいかにも「聖地巡礼」狙いっぽいw)中学2年生の仲良し女子4人組が、夏休みの日々を通じて友情を再確認しながら、自己と向きあい、葛藤を越えて大人へのステップを上っていく……というような物語で、4人のうちのひとりの自宅でもある神社にある謎の石「御石様」の不思議なパワーが引き起こす超常的な現象がそこに絡んで、ストーリーが展開していくというものです。

特に個人的に6話「夏海のダブルス」は最も気に入っています。
一般に「自分を客観的に見つめなおす」というのが思春期の重要な課題であるのは、あらためて言うまでもないのですが、それをまさかあんな形(サブタイトルがじつはものすごいダブルミーニングなのですよ)で………!
アニメでしか、そして『夏色キセキ』でしか成し得なかった超絶の描写に、思わず感涙でありました。

他にも定番の入れ替わりネタを使った4話や、小学生のときの自分たちと出会う10話なども、それぞれ珠玉の一篇と言うことができると思います。


ただ、世間での評判は必ずしも芳しくない向きもあるようで、私自身あのビミョーだった第1話の視聴直後は、もう次週からは見ないでおこうかと思ったくらいです。

2話からは、これがどういうアニメなのかが、なんとなくわかったので視聴継続の判断となったのですが、あぶないところでした。

思うに「女子中学生4人が主人公の深夜アニメ」「人気声優ユニット・スフィアのメンバー4人がそのまま主要登場人物4人組の声を担当し、主題歌も歌う」「地方都市を舞台にした聖地巡礼対応アニメ」といった事前情報から期待された【萌え系の女の子たちが百合百合しくむつみあう日常系アニメでは?】という予測が、第1話では裏切られたことに戸惑った視聴者も多かったのではないでしょうか。

その「裏切られ」方が、じつはかなり斜め上だったことは、2話まで見ないとわからないという構成が、少なからぬ視聴者を逃してしまったとしたら残念です。


そう、これはむしろ変身もアイテムもバトルもなかった時代なら日曜の朝8時半にでも放映されてたはずの、正統派女の子アニメと見れば非常に良質な物語なのです。

ソコをプリキュアこそが「女の子アニメ(と呼ばれているジャンル)」の王道となっている今の時代にこそ、その今の時代に合わせて練り直したものを制作したという、逆転の発想は高い評価に値するのではないでしょうか。
(「御石様」の不思議なパワーが関わってくる点には若干の「魔法もの」要素も含まれていると言えますが)

そう考えれば、「主要登場人物に中学2年生の女子が4人もいるのに、なぜ誰もプリキュアにならないっ!?」という冗談も、出るべくして出ているということになるでしょう。

もちろんテレビ番組が、これは男の子向け、こっちは女の子向けと、視聴者の与り知らぬところで分断され、その内容がまったく異なってしまっていた状況は好ましいとは言えません。

その点においては、『聖闘士星矢Ω』も『スマイルプリキュア』も、やっていることはあんまり変わらない……こともまた、時代の進歩の賜物なわけで、大いにスバラシイのです。


しかし一方で、かつての「女の子アニメ」と呼ばれたものの中にある普遍的な良さを、時代をこえて受け継いでいくこともまた意義があることなのではないでしょうか。


   


どのあたりが「女の子アニメ」を今の時代に合わせて練り直してあるのか、それを端的に示すのは、やはり恋愛(異性愛)要素を極力排除している点でしょう。
それによって女子主人公が恋愛をとおして客体化する危険性を回避し、女子どうしの友情の展開や主体的な成長物語が余すことなく描かれうる可能性が担保されているのは、まさしく新しい時代に望まれるところです。
『夏色キセキ』の作品世界に変身なりバトルなりを付加すれば、いつでも『夏色キセキ☆☆☆☆プリキュア!』、あるいは『機動戦士ガンダム夏色キセキ』などが作れそう……というのも、そんな今風の女の子アニメだからこそ、そうした女の子アニメ男の子アニメの混沌とした境界線上の作品群とも親和性が高いことの証左に他ならないでしょう。
(ちなみに7月から始まるという『TARI TARI』も、いわば『スイートプリキュア』や『シンフォギア』から変身とバトルを抜けばこうなる…というようなアニメだと見受けられます)


◎逆に、そうした意味では、女の子アニメと男の子アニメの境界が曖昧化しているとはいえ、例えて言えば現在は男女共学校だけど元は女子校/男子校であることに由来する校風の違い……のような差異がアニメにもあるのは、むしろ必要で大切なことではあるのです。


◎その他、ツイッターでの関連ツイート参照は、ツイログを【 夏色キセキ 】で絞り込んだりしてみてください。


 
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