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バレンタインデーは友情の迷宮2017 [多様なセクシュアリティ]

本日はバレンタインデー
これについては過去にも何回か言及してきました。






ちなみにこの2018年においても「Googleのバレンタインデーには性別がない」仕様は継続しているようです。
さすが Google、よくわかっていますネ。


で、我が娘・佐倉満咲さんについては、前記事のとおり受験でそれどころではなく、しかも高校3年生はこの時期には登校しなくてもよいということもあって、ある意味久しぶりにバレンタインデーにまつわるあれやこれやとは全く無縁の2月14日を過ごしてはったりするのです。

ただ、昨年をふり返ると、ツイッターにはこのようなことが記されています
(というわけで直接的にはネタは去年のものなので、タイトルの「2017」は間違いではないのですノ)


高校入学後の人間関係(の詳細はプライバシーに関わることなので公開できない内容が多いというか、そもそも本人からワタシに語られる時点でかなりフィルターにかけられている;)は、《「男女間の友情は成り立つか?」2015》でも書いたとおり、いわゆる男女を問わずのびのびと交友関係を広げることを基本としてきたようなのですが、その一方でどうしても「異性」であるがゆえに男の子との関係性が既存の恋愛コードに絡め取られて解釈されてしまうがゆえの面倒さがある……というのは、2年生になってからも継続していたようです。

しかも聞けば例の「小説版での青木太陽クン相当キャラ」である鮎原光太郎クンとはクラス替えなどもあって若干の距離を取らざるを得なくなったのに代わり、「2年生編の新キャラ」も登場していた模様。
推察するに、いわば「小説版外伝の5年生のときのクラスメート益平健人クン相当キャラ」っぽい雰囲気ですね。

ともあれ、人間関係が「男女」を基準に分断されてしまう現行ルールはやっぱりめんどくさい。
そんな中で、我が娘・佐倉満咲さんがこの先どのような実践をおこなっていくのか、引き続き見守りたいところですし、大いに興味深いところでもあります。


そして、そうは言っても近年は、この「友チョコ」なる概念の台頭によって、バレンタインデーのありようが総体的な変化を見せてきているのも注目に値するところでしょう。

今後ますます、男女間での恋の告白という因習を超克して、誰もが自由に誰かとの親密性を確認しあう企図をもってチョコレート等々を交換するイベントとして再構築されていけば、なかなかに素晴らしいことです。

人間関係が「男かそれとも女か・異性か同性か」で切り分けられる窮屈な世界観を変えるきっかけとして、むしろバレンタインデーが活かせるのだとしたら、それは真に「愛」の名に相応しいイベントになりえるのではないでしょうか。


………余談ながら、いわゆる「小説版・佐倉満咲さんの高校生活」ともされる『1999年の子どもたちですが、そのバレンタインデー編あたりを読み直すと、執筆した当時はまだ「友チョコ」概念は一般に把握されていなかったようですね;
2000年代初頭に考えていたよりも、現実の2015年度のほうがいろいろ進んでいたと評価できる部分があるということなので、けっこうスゴイことではないでしょうか。

この際なので小説『1999年の子どもたち』のバレンタインデー付近、以下に抄録しておきます。
(本記事の趣旨に見合うところだけ抜き出すと、結果的にすこぶる平和な雰囲気ですが、実際にはクリティカルな事件が起こるバレンタインデー編です。全文はゼヒ kindle版にてノ バレンタインデー編は第5巻。あと外伝の満咲さん小5編は第6巻です)


  


「ねぇミサキ、バレンタインデーって、ボク、チョコレートをあげないといけないほうだったんだっけ??」
むろん日本におけるバレンタインデーは、長らく「女性から男性へ、愛の告白の意味を込めてチョコレートを贈る日」とされてきた。近年は贈る物品の多様化や、いわゆる義理チョコの習慣の一般化、また女性自身が高級チョコなどで少し贅沢を楽しむような事例も増えるなど、その様相は変容しているものの、「女性から男性へ」という基本線は、なかなか崩れない。そんな中では、「人間には男と女がおり、男は女に、女は男に恋愛感情を抱くものである」という前提に当てはまらない者は、自分がはたして贈ってもらえる立場なのか、また自分が贈るとしたらいったい誰に対して贈るものなのかが、にわかにはわからなくなって、チョコの特設売場前を通るたびに頭を抱えることになってしまう。歩のように女性としてバレンタインデーを迎えるのが生まれてはじめてというケースでは、なおさらであろう。
驚きと戸惑いがあらためて入り交じったような歩の口調に、満咲は自戒を込めて苦笑すると、あっさりと答えた。
「まぁ、あげたい相手にはあげて、もらえるところからはもらっとけば?」
実際、去年などの満咲は、日ごろ仲よくしている友人たちに男女を問わず義理チョコを贈ったものである。
「そ、それでいいのかなぁ」
「いいって、いいって。……ボクからも軽くあげるヨ」
「う、うん……」
「あとまぁ、祥一や太陽のヤツとかは、いちおう世話になってるし、小っちゃいのでいいから用意しとくのが社交儀礼ってもんかな」
満咲の言い方はミもフタもないなと思いつつも、その内容の妥当性に歩は納得したのだった。
[中略]
翌週になると、教室の雰囲気も、いよいよバレンタインデーまでのカウントダウン体制になる。本命告白を企てている者もひとりならずいるのか、女子の間にはいつになくピリピリした気配も漂わぬではない。一方、男子の側からも、どこかそわそわした様子が伝わってきた。贈る側と贈られる側として、このようにクラスが“女子”か“男子”かで二分されてしまう状況を、満咲は見るともなく眺めながら、どこか釈然としない思いがした。
(なんだかなぁ……)
[中略]
翌日は12日の金曜日だったが、14日以前で平日はこの日までなため、学校は事実上バレンタインデーだった。
「佐~倉さん。コレあげるっ」
“満咲ファン”らしいクラスメートから、いくつかチョコレートをもらった満咲があらためて見渡すと、1年2組の女子は、けっこう屈託なく、女子どうしでのチョコの交換をおこなっていた。
「黒沢さん、文化祭でお世話になったお礼よ」
「えっ、いいの? ありがと……」
歩も、いっしょに大道具係をした女の子たちからチョコの包みを受け取って、まんざらでもない様子である。
「最近、体調よくないの? 気をつけてね」
「う、うん…………」
ただ、事情を詳しく知らないクラスメートの善意には、やや戸惑いぎみにうなずくしかない歩だった。
真理子はせっせと義理チョコを配っていたが、太陽へ渡す分はその中には含まれていないのだろう。その太陽や、祥一はというと、それなりに義理チョコが集まって、これまたご満悦の様子であった。
[中略]
こうして“実質バレンタインデー”の一日は過ぎた。
帰宅した満咲は、もらったチョコを整理するのに、ひとしきり時間を費やされることになった。理素奈や詩諳からのものも含めて、それらはけっこうな数にのぼっていた。
いくつかのラッピングを解いたとき、満咲はふいに思い出した。
(はじめてバレンタインにチョコをもらったのは、保育園の、あれは年少のときだったっけ……)
それは年少組の日々も残り少なくなった2月の半ばだった。同じコアラぐみのユミちゃんが、おもむろにスモックのポケットから何かを取り出すと、「ミサキちゃん、これあげる」と言ったのだ。満咲がよくわからないままに受け取ると、それは銀紙に包まれた一片のお菓子らしいものであった。ユミちゃんが、なぜ今日ことさらにお菓子をくれるのかが、いまひとつ納得できないまま、とりあえず「ありがとう」と言うと、満咲は家に帰ってから、この件を両親に報告した。
「そうか、今日はバレンタインデーだったっけ……」
「ミサちゃん、今日はね、好きな人にチョコレートをあげる日なのよ」
「ユミちゃんが自分の『好きな人は誰かな~?』って考えたときに、いちばんがミサキだったんだね」
「ミサちゃんが、ユミちゃんの好きな人だったんだね。よかったねー」
両親からそのような説明を受けると、満咲はなんだかうれしく、心があたたかくなったような気がしたものだ。
(あのころは無邪気だったねー……)


◇◇


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