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「LGBT」など性的少数者の人権、セクシュアリティの多様性、クィア論、男女共同参画などや、そうした観点に引きつけてのコミュニケーション論、メディア論、「アニメとジェンダー」など、ご要望に合わせて対応いたします。※これまでの実績などはお知らせブログにて

名状しがたい性の多様性のようなもの [メディア・家族・教育等とジェンダー]

深夜アニメは画期的な特筆事項に満ちた掘り出し物も多いですが、もっぱらとりあえず気軽に見て楽しい作品も当然少なくありません。

這いよれ!ニャル子さん』は、どちらかというとその後者としてのテイストが大な番組のはずでした。

簡単に説明すると、学園ドタバタコメディに宇宙SFファンタジー的要素を盛り込んだ、いわば【いまどきの『うる星やつら』】のようなものってところでしょうか。

ただ、平凡な男子高校生の日常が突如宇宙からやって来た女の子によって非日常になってしまうアニメ…という共通項でくくったとき、『這いよれ!ニャル子さん』のどのへんが「いまどき」かと言うと、やはり『うる星やつら』での諸星あたるポジションの主人公・八坂真尋が、いわゆる【草食系男子】なところかもしれません。

もしかして、諸星あたる的な「肉食」っぷりは、例えば今の若者には尾崎豊が理解できないと言われているのと同様に、(たとえ異性愛の男子であっても)共感できるようなスタンスではないのかもしれません。

あと、ニャル子さんによって守られる存在というところに既成のジェンダー秩序に対するズラしもありますし、なぜか声は女性声優さんがアテていますしね。
(『うる星やつら』ではしばしばあたるに電撃攻撃を加えていたのはラムのほうなのに、こちらでは真尋がニャル子をフォークで刺すのがソレに相当する点も、ジェンダー面での逆転と言えるでしょう)

何よりこの主人公・八坂真尋のプロフィールが画面に示されるところで、ちゃんと「彼女なし 彼氏なし」と恋人の有無に関して両方併記されてたところは、さりげなくスゴイことでした。

 BL120506-MahiroBoth.JPG
画像はオンエア録画の表示画面をカメラで撮影
 
「宇宙には個人情報保護法はないのかーっ!?」

この『ニャル子さん』の世界では、同性愛も異性愛と対等のフツーのことという前提が浸透していて、クー子がニャル子にベタ惚れ、ハス太が真尋に一目惚れってのも、決して二次創作の同人誌のネタでもなんでもなくて公式な設定ですし、これらが性他認上で同性間であること自体はいっさいギャグになっていません。

視聴者も「男女の」「異性愛」を前提としていては、劇中のフクザツな三角関係的人間模様が逆に理解できなくなってしまうという、そういう仕様の作品になっているわけです。


やはり深夜アニメには、ジェンダー(あるいはセクシュアリティ)センシティブな視点で見たとき、旧来の批判が色褪せて見えるほどカッ飛んだ掘り出し物作品があるので侮れないですね。

はたして深夜アニメは既成のジェンダー秩序(およびセクシュアリティ秩序)をどこまで撹乱できうるのか!?

少なくとも、こうしたつくりの物語群を見慣れてくると、逆に、いつまでも【「男女」の異性愛物語】を平然と流し続けているゴールデンタイムのドラマのほうが、むしろ幼稚な「お子様向け」に思えてくるからオモシロイものです。


   


◎その他ツイッターにてニャル子さん関連ちらほらと…
http://twitter.com/#!/tomorine3908tw/status/192242511996133376
とか
http://twitter.com/#!/tomorine3908tw/status/197660705858650112
とか
(特に「そもそもトランスジェンダー・セクシュアルマイノリティは、『性別は男と女っ!』と思い込んでいる人々にとっては、いわば【這いよる混沌】」…は真理だ(^^)v)
ツイログも検索してみてください

 

◎そういえば『モーレツ宇宙海賊』でも、17~18話では劇中で(視聴者による百合解釈ではない)正式な同性愛カップルがストーリー上の重要な位置付けで描かれましたが、やはりその2人が女どうしである点には、誰も何も言わずに終わりました。
(ただ、そのうちの1人は元々ボーイッシュなキャラで、しかも当該回ではたまたま話の流れで男装風のコスプレをしていたのは、ある種の「演出上の配慮」だったかもしれません)

 

ゴールデンタイムのドラマも、このところフジテレビ系の「恋愛の月9」が、『ラッキーセブン』とか『鍵のかかった部屋』などと、それぞれ探偵モノ、推理モノで、「恋愛」は後景に退いているので、何らかの地殻変動が起きていると見ることも可能かもしれません。


 


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