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機動戦士ガンダムAGE3世代目キオ編の期待と不安 [メディア・家族・教育等とジェンダー]

というわけで問題作『機動戦士ガンダムAGE』、主人公は3世代目のキオ編に移行しました。

その初回を見る限りは、とりあえず心機一転の第1話として見れば、まずまずイイ感じのロボットアニメだったと言えるでしょう。
往年のZZガンダムへのオマージュとも見られるガンダムAGE-3の合体システムを伴った初登場も一定のカタルシスを伴った演出として評価できます。

過去2世代においては空気キャラなどという手厳しい評価もあったヒロインポジションも、今度のウェンディは多少は個性的で行動力がありそうな片鱗を見せていました。
まぁ作品としてはこの3世代目で終了なので、ウェンディはエミリーやロマリーのときと違ってキオと結婚して子ども(それもできれば男の子)を残すという使命の桎梏からはじめから解放されているという効果は思いのほか大きいかもしれません。

ただ、すでに祖父となった1世代目の主人公フリットが、いまだに少年時代の怨念から敵への復讐心に囚われた果てにいろいろお膳立てをして、孫キオへと血縁に基づいたガンダムの継承を画策している姿は、どうにも気持ち悪かったですね。

今回はキオが一人っ子なので、兄と妹で差が付けられる問題は発生しませんでしたが、依然として、本人の意志よりも先に、まずは血縁によって方針が決められてしまっているというところの描写が、違和感を視聴者に与えないようなものにはなっていませんでした。

あるいは、このように何十年も復讐心を燃やし続けるというのも、リアリティとしてどうなのかという気はしますし、それは決して平和で皆が幸せな世界を創造していくためにはならないわけなので、もしもこの先そのあたりの描写がキチンと落とし前をつけるものにならないのなら、これまた『機動戦士ガンダムAGE』の難点として再浮上してくることでしょう。

 

◎そんなこんなで、ユノアがガンダムで謎の敵と戦うスピンオフ小説『僕の妹はガンダムに乗れる』、さらに続きを書いてみました(^^)v


 『 僕の妹はガンダムに乗れる 』
第3話「親友はXラウンダー」

「はぁ……」
昼休みの校舎の屋上で、ユノア・アスノはひとりため息をついた。
あれ以来、親友のカノン・アスカとは気まずい雰囲気が続いている。
(こんなことならガンダムに乗ったりするんじゃなかったかなぁ……)
カノンを危険に巻き込みたくない。みんなを守りたい。みんなの平和なトルディアを守りたい。大好きな人達が暮らす、このふるさとのコロニーを……。
その思いは確かにある。
しかし、自分が謎の敵と戦うために伝説の戦士としてモビルスーツに乗っているなんて秘密を抱えること自体が、平穏な日常に影を落としてしまうとなると、いささか気が重くなる。
(あ~ぁ……フツーの女の子に戻りたい)
ユノアは、その手に握りしめたAGEデバイスを見つめた。
(中略)
「アタシたちの学校にナニすんだぁぁーーーっ」
ユノア怒りのビームサーベルは、校舎に群がっていた敵の雑魚タイプのうちの1体をまずは一刀両断した。
すでに全校生徒も先生方も避難が完了しているようだったが、それでも校舎など施設に被害が出れば、明日からの学校生活がままならなくなる。
さらにユノアは校舎やその脇の花壇にまで気を配りつつガンダムの歩幅を進めると、体育館に破壊の魔の手を伸ばそうとしていた2体に、強烈な刺突と斬撃をそれぞれ食らわせる。
「みんな大好きな学校を壊そうとするなんて……、絶対に許さない!」
操縦席でいつものようにそう叫んだユノアは、残るボスキャラ敵に向かってビームサーベルを構えた。
ボスキャラ敵は一瞬ガンダムに対して不敵な笑いを浮かべたように見えた。
そして素早く跳躍すると体育館の裏手へ回り込んだ。
「あっ、待て~っ」
体育館の裏手にはモビルスーツ部の部室兼工房がある。
(中略)
「カノーーーン!」
爆風で倒れるカノンを映し出すモニターに向かってユノアは叫んだ。
まずい。これはマズイ。このままではカノンが危険だ。
(いったいどうして?)
前回といい、カノンはなぜ適切に避難せずに、こんな危ないところにとどまっていたのか??
だがふとユノアは思った。
(……もしかして、アタシを心配して?)
今日もたしか校舎から全校生徒が避難を始めた際、その流れを乱すようにガンダムを取りに自宅に戻ろうとしていたユノアを、カノンは見ていたような気がする。
「カノン……」
ともあれ、もはや迷っている場合ではなかった。このまま放置すればカノンに危害が及ぶのは確実だ。それよりは――。
意を決したユノアは、ガンダムをカノンを覆い庇う位置にしゃがませると、コクピットのハッチを開いた。
「カノン!!」
カノンの驚く顔がそこにあった。
無理もない。あの白いモビルスーツの中から現れたのが知り合いで、しかも長年の友人ユノアだなんて。
「ユノア……、ユノアなの? どうして」
「話は後。早く乗って」
「乗ってハヤク、ハヤク乗ってハロ」
ハロが合いの手を入れるようにくり返すのを聞きながら、ユノアはカノンに手を伸ばし、引っ張ってガンダムに乗せた。
単座式のガンダムAGE-1のコクピットゆえ、カノンはユノアの膝の上に斜め向きに座るような格好になった。
「ちょっと窮屈だけど、あいつをやっつけるまでガマンしてね、カノン」
(中略)
それにしても今日のボスキャラ敵はすばしこい。ユノアのガンダムがどうしても学校を慮って動きが鈍くなるのとあいまって、攻撃も防御もついつい後手に回ってしまう。
「そこか!」
ユノア会心のビームサーベルの一閃は、しかしよけられてしまった。
そして次の瞬間、姿勢を崩したガンダムの背後に敵のキックが決まる。
「ど、どうしたら……」
と、そのとき偶然ユノアとカノンの掌と掌が触れた。

何か電流が走ったような感覚が、2人を貫いた。
「な、何、今の?」
「ユ、ユノア……」
「どしたの、カノン?」
「私、わかる。敵の動きがわかる」
「え?」
「来る! 右よ」
カノンに言われるままにガンダムを反射的に動かしたユノアは、右からの敵の一撃を回避できた。
「次は上から」
カノンを信じてビームサーベルを上方へと向けるユノア。するとなるほど、今日はじめての先回り攻撃が成功した。
「行ける。これなら行けるよ、カノン!」
ここでAGEデバイスが光った。
腕先に七色の光がほとばしり、ガンダムはレインボーキュアライフルを手にする。
「……まだ来ない。今度左から仕掛けてくるような素振りがあったら、すぐに後ろを振り向いて撃って」
「わかったわ」
カノンの予告どおり、ほどなく敵は左からガンダムを襲うように見えた。ユノアはそれに構わず、ガンダムを反転させながらライフルを後方へ向ける。ソコにはドンピシャ、ガンダムを欺いたつもりの敵がいた。
「ビンゴ!」
カノンが嬉しそうに叫んだ。
「OK~! ガンダムレインボーキュアシュートっ!」
(中略)
戦いが終わり、ユノアとカノンは、ガンダムが傍らに佇む校舎の、その屋上で、向かい合った。
「今日はありがとう。カノンのおかげで勝てたよ」
カノンが発揮したのが、脳の通常は未活用の領域まで活性化させることで発現する超感覚で、通称Xラウンダー能力と呼ばれるものであるというのは、後で知ることになる。
「私も、ありがとう。この前だって……ユノアが守ってくれてたんだね」
「ごめんね。アタシがガンダムに乗ってること秘密にしとかないと、みんなに危険が及ぶって思って」
「もういいよ……ユノアは悪くない。私のほうこそ、そんなこと知らなくて、それで私、ユノアにひどいこと言ったよね、本当にゴメン」
長年の親友である2人にそれ以上言葉は不要だった。
見つめ合い手を取り合ったユノアとカノンは、そうして互いの友情を確かめあう。
「カノン……」
「ユノア……」
それからユノアはおもむろに決意を語った。
「ねぇカノン……、アタシ、この戦い、最後までやりきるよ」
「…………」
「最初は……トルディアを守りたい、自分にそれができるんならって、はりきってガンダムに乗ったけど、……カノンと気まずくなって、自分だけこんな思いをしなきゃいけないんなら、こんなのもうイヤだって、ちょっと弱気にもなってたんだ」
「…………」
「でも今日あらためて思った。アタシやっぱり、みんなのために戦いたい。自分が、カノンや学校のみんな、トルディアの人々を守ってみたいって」
「ユノア……」
「そう思わせてくれたのはカノンだよ。これからもカノンがいてくれたら、きっと絶対大丈夫。あらためて……ありがとう」
「私、応援する。ユノアなら、きっと最後までやり遂げられるって思うから」
「うん……」
上空は夕刻の晴れた空にモードが変わっていた。コロニーの気象や昼夜をコントロールするコンピューターも正常に戻ったようだ。
屋上の2人をガンダムは見つめ続けている。
2人が守った学校には、明日になればまた新しい1日が始まるのであった。


☆彡


さっそく↓ソバスチン様よりコメント↓いただきました。(2012/04/30)
 >ソバスチン様、某所ではお世話になってます。
 >スマイルプリキュア関連の記事も近日まとめたいと思います
非常に的確なご指摘です。
特に『フリットには「死んだユリンの名誉と尊厳を守る」という発想はスッポリ抜けてる』という点は、私もうっかり見過ごしていた重要なポイントです。
フリットの描写が気持ち悪い原因として、おそらく大きな比重を占めているのでしょう。
つまるところフリットは自分の若き日のリア充を妨げられたことを恨んでいるわけで、ユリンそのものは自分のリア充のための道具にすぎなかった(往年のフリットもまたユリンの人格を大切にしているわけではなかった)……ように見えてしまう、すなわち制作側がやはりじつはそういう発想なのだと解釈すれば、いろいろつじつまが合います。
制作側がそんな(女性はしょせん男のための道具)発想であればこそ、復讐に燃えているはずのフリットに一方で結婚させるという展開も、なるほど、させてしまえるのかもしれませんね。


 


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コメント 1

コメントの受付は締め切りました
ソバスチン

始めましてm(_ _)m某所からTBを辿って以降、記事を拝見させていただいてます。

このガンダムAGEの原作者と言える「ゲーム屋」のH氏ですが…。
恐らく親子三世代と言う発想はDQⅤみたいなのをガンダムでやりたいと思ったのでしょう。

私はアベンジャー(復讐者)なキャラは結構好きです、しかしフリット・アスノは復讐劇の掟を破った個人的に不愉快な人間です。
別に復讐のために権力を手に入れ私物化することは作劇上いっこうに構わないと思います。
私が最もフリットを許せない理由は「家族を作り人並みの幸せを手に入れた。」 事です。
復讐とは本来、反社会的な行為と言えます、成就するためにはあらゆる物を捨てなければいけません、守る覚悟の無い人間が家族とは言語道断。
恐らくフリットは私怨は晴らしたい気持ちはあっても「死んだユリンの名誉と尊厳を守る」という発想はスッポリ抜けてるのでしょう。

私の好きな痛快娯楽復讐劇「ガン×ソード」の主人公ヴァンは婚約者を殺した敵を討つため、挙式のタキシードを劇中着続け、物語の最後まで童貞でした。
同じく復讐劇のRPG「メタルマックス2」では、出会った女性と結婚する選択肢がありますが
結婚をすると、主人公は責任をとり復讐を諦め(つまり強制ED)ます。
DQⅤに対するアンチテーゼですね。

あまつさえ、フリットは息子アセムの願いを反古しキオをゲーム感覚で人殺しをする戦闘マシンにしました。
とても子供には見せたくありません、キッズ層の視聴率が底辺なのはせめてもの救いですがw

今までのH氏からしてフリットに然るべき報いを課すのか疑問ですが
そもそも、やりたい放題なリア充老人になった彼がどうなろうと何の感慨も湧きませんネ(`ヘ´)
by ソバスチン (2012-04-30 23:02) 

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